メルヘンをテーマに、絵本や児童文学の世界の香りを創造している「GREEN GRASS」主宰の豊泉真知子さん。全12回に渡り、セラピーライフで『メルヘン』をテーマに多数の童話の香りを制作してもらいます。
果たして、どんな香りに仕上がるのでしょうか?
文◎豊泉真知子
第4回目のメルヘン童話
~花を支える大地の精の香り~花たちに息吹を与えた画家オルファースの『ねっこぼっこ』
大地に育まれた小さな虫や野の花たちを、オルファースは「ねっこぼっこ」という愛らしい子どもの姿で描いています。ジビュレ・フォン・オルファースは東プロイセンで1881年に生まれ、8人のきょうだいと一緒に、自然と触れ合いながら育ちました。絵描きの叔母の影響でベルリンの美術学校で学び、24歳で聖エリザベート修道女会に入ります。美術を教えながら絵本や宗教画を製作し、第一次大戦中、34歳で亡くなるまでに全部で8冊の絵本を残しました。自然の持つ生命力や温かさのある絵本は、古典絵本としてドイツの子どもたちに現在もなお長く愛されています。
「さあ おきなさい こどもたち もうすぐ春が やってくる」。 ねっこぼっこは土のなか、大地のかあさんといっしょにすんでいます。うきたつ春、かがやく夏を楽しんで、こがらしふくと、かあさんのもとへもどります。 かわいい、根っこの子どもたち(ねっこぼっこ)は、春が近づくと春の洋服を作り、大地のかあさんにできた洋服を見てもらい身支度を整えます。虫たちのお手入れも欠かしません。国中に春がやってきました。色とりどりの仲間たち、喜び勇んで外にくりだします。虫も、花も草も。 森には、すずらんや、小さなすみれがかくれんぼ。小川のほとりでは、わすれなぐさが白いお花のヒツジグサ(スイレン科)と遊んでいます。 夏になり麦も実り、花の子たちがくるくる踊っています。木枯らしが吹くと秋です。木枯らしが、みんなを大地のかあさんのお家の中へ吹き戻してくれます。 「ねどこへ おいき こどもたち ぐっすり おやすみ また あたらしい 春が くるまで」 大地のかあさんに、しっかり抱きしめられて……。どの絵にも根っこがしっかりと描かれています。 大地のかあさんから飛び立ち、大地のかあさんの懐に帰る、優しいお話です。
『ねっこぼっこ』自然香水レシピ
香りのイメージ
春の初めに、ひょっこりと花たちが活躍する、大地の香りを残して。
ミモザ(フランス・プロヴァンスの春)
- 大地のかあさん
- 地面の下では、どっしりとしたかあさんが愛情を降り注ぎます。(根)
- 春
- 準備ができた花たち。次々と咲き誇っていきます。(春の花)
- 夏~秋
- 楽しく遊んだあとは、こがらしが。かあさんのもとに戻ります。(木の実)
<作成> ~花を支える大地の精の香り~
ヤロウ・ドイツ・ハーブ園の夏
ハートノート5滴:ジャスミンAbs.3、アンジェリカ(根)1、ヤロウブルー(夏)1
ベースノート4滴:パチュリー2、ミモザ(春)1、バイオレットリーフ(春)1
ヘッドノート9滴:ライム3、マンダリン2、ヒソップ2、プチグレン1、ジンジャー(根)1
ニュアンサー1滴:ナツメグ(実)1
※ホホバオイルで作成。全体で5mlに。熟成は2ヶ月かかります。時々香りを確かめましょう。
参考文献) ジュビレ・フォン・オルファース『ねっこぼっこ』秦理絵子訳(平凡社)、『手作りの自然香水ハンドブック』(東京堂出版)
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著者プロフィール
豊泉真知子(とよいずみまちこ)さん
アロマプランナ-、ドイツの精油タオアシス輸入総代理店GREEN GRASS主宰、ドイツの本の出版企画。ヒルデガルトの植物を学ぶ会代表。ドイツ・ヒルデガルトの旅を毎年7月企画。メルヘンと香り展開中。
取材協力◎GREEN GRASS TEL048-886-6613 http://www.egreengrass.com/