セラピスト12月号の第2特集「カウンセリングで“悩み改善”、コーチングで“目的達成”」では、カウンセリング・コーチングのプロフェッショナルが登場。「緊張してうまく聞き出せない」「カウンセリングとコーチングの違いは?」「どこまで介入すればいいの?」といったセラピストがクライアントとのコミュニケーションで感じている疑問や悩みに解答しています。ここでは、カウンセリング・コーチングのプロフェッショナル竹内義晴さんに伺った、本誌に掲載しきれなかったQ&Aをご紹介します。
解答◎竹内義晴さん(特定非営利活動法人しごとのみらい)、構成◎セラピスト編集部
Q クライアントを前にすると、話をどうすすめればいいのか迷ってしまいうまく聞き出せない……。
A 会話をコントロールするには“フロー(流れ)”が重要です。
傾聴、質問、承認のスキル+「会話」のスキルでステップアップ
カウンセリング・コーチングでは、クライアントをどの状態に導くかという「目的」は異なりますが、技術的な面において大きな違いはなく、また、あえて分けて考えるという必要はないと思っています。そのうえで特に重要なスキルとなるのが、以下で紹介する「会話の流れ=コミュニケーションフロー」です。このフローをもとに会話をすすめていくことで話の流れを組み立てやすくなり、“話をどうすすめればいいのか迷ってしまう”ということが少なくなるはずです。ここでは、コーチング時のコミュニケーションフローのステップと、具体的な会話の例を紹介します。
「コミュニケーションフロー」のステップ
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まず最初に……
会話がスムーズにすすむよう、世間話などで場を和ませる。天気の話や笑い話など、ホッとできるような話題がおすすめ。
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ステップ1テーマを明確にする
「今日、解決したいことを一言でいうと何ですか?」
「1時間後に”こうなっていたらいいな”という状態はなんですか?」 -
ステップ2現状を確認する
「今は、何に悩んでいるの?」
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ステップ3望ましい姿を明確にする
「もし、それが叶っているとしたらどうなっている?」
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ステップ4望ましい姿と現状のギャップを明確にする
「○○を実現させるためには、何があればできそう?」
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ステップ5小さな一歩へと誘導する
「何から始める?」
さらに、このコミュニケーションフローの中で、“いまの話、もうちょと深堀したいな”“言いたいことがよく分からなかった”と言う際に、クライアントから上手く話を引き出すことができるいくつかのキーワードも紹介しましょう。傾聴スキルのひとつである「オウム返し」に加えて、「たとえば?」「具体的には?」のような次を引き出す質問を加えると、相手の考えを深堀りできます。
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話を深堀するには?
「なるほど、○○ということですね。それで?」
「つまり、○○ということですよね。それから?」 -
話の内容を理解したいときには?
「○○ということですが、たとえば?」
「○○ということですが、具体的には?」
「○○ということですが、詳しく教えていただけますか?」
自然なフローで誘導できるセラピストに
ここでは、会話をスムーズにすすめる解決策としてコーチング時のフローを例に紹介しましたが、先述のとおり、コーチングとカウンセリングは目的の違いこそありますが、傾聴や質問と言ったコミュニケーションスキルに大きな違いはありません。
悩みを解決したクライアントは自然と“こうなりたい”と目標を持つようになり、コーチング要素が必要な場面もあります。また目標を達成するためにはさまざま問題や悩みが発生し、カウンセリングの要素が求められます。カウンセリング・コーチングのスキルを身に付け、クライアントに対してシームレスに活かすことができる。これがセラピストとして理想的な形であり、必須のスキルともいえるのではないでしょうか。
プロフィール
竹内義晴さんたけうち・よしはる 特定非営利活動法人しごとのみらい理事長。元プログラマーで、職場の人間関係のストレスで心身共に疲弊した経験から心理学やコーチングを学ぶ。「仕事を楽しくする」を活動テーマに、コミュニケーションの講演・研修、コーチング、カウンセリングなどに従事。新潟県在住でリモートワークなどこれからの働き方も実践している。
https://shigotonomirai.com/