『セラピスト』2023年12月号 第1特集連動企画
Special Talk Act.2 野見山文宏×山内さちこ
更年期の過ごし方について語る

投稿日:2023年11月3日


『セラピスト』12月号の第1特集は「リンパドレナージュplusで更年期ケア」
特集の冒頭には、解剖学の専門家で東洋医学にも詳しい鍼灸師の野見山文宏さんと、更年期女性に特化したホリスティックメノポーズラボ主宰の山内さちこさんによる対談を掲載しました。
その対談ですが、お2人の話がどんどん盛り上がり、限られた誌面ではとてもとても収まりきらないほどに……。
リンパによる更年期ケアのみならず、現代を生きる私たちの生き方そのものについてまで考えさせられた素敵なお話を、このままお蔵入りさせてしまうのではあまりにももったいない!!
ということで今回、お2人の対談の続きをこちらでご紹介します!

文・構成◎セラピスト編集部

 

無理をせず、自然から離れず
心身ともに自分を労わることが大切

人間も自然の一部で、更年期は自然なこと

編集部 更年期ケアのために、ゆったりとした呼吸を取り戻すリンパケアが大切だということがよく分かりました。他に、更年期について感じておられることはありますか?

山内さちこさん(以下、山内) 私は会員制でエイジングケアを行っていますが、若い頃から継続的にサポートをしてきたお客さまは更年期ケアが不要な方ばかりです。
逆に、新規でいらっしゃる方は症状が重いことが多いですね。

日本の女性はとても真面目で優しく、自分のことを後回しにしてしまいがち。不調に気がついても、つい「まだ大丈夫!」とごまかしごまかしで頑張ってしまいます。そして気がつくと本来の身体のリズムを不自然なものにしてしまい、誰にも相談できずにこじらせてしまう人が多いです。

更年期の問題は長年無理がかかって起こるので、こじらせる前に今の生活を見直し自分自身を労わることを考えるのがとても大切なのです。

野見山文宏さん(以下、野見山) 更年期も自然なのだから、薬だけで自然をコントロールできるというような幻想は捨てなければいけませんね。

それと、やはり身体における土用の時期なので、自分を見つめ直し、手放すものは手放したり、環境を整えたりということも大切です。

山内 本当にそう! 身体のケアだけではだめですね。

更年期は特に、その方の生活背景や考え方も見えてこないと、いくらケアしても良い方向に整っていかないんです。

私自身、以前は横浜の中心地にサロンを構え、朝10時から22時まで営業していました。でも、その仕事のスタイルを見直し、湘南に移住しました。
結果として、この決断は正しかったですね。

ゆったりと海辺を散歩したり、季節の移ろいを眺めたり、今までとは違う価値観を持った自分が存在しています。

サロンにいらっしゃるために、鎌倉の駅に降り立っただけで「潮の香りがしますね! これだけで元気が出ます」と、などとおっしゃるお客さまも多いです。皆さま、それほど自然と触れ合えていないんですよね……。

野見山 人間も自然の一部ですからね。私も、2001年に伊豆に移住し、自然農の畑を耕し、波乗りをする生活に切り替えました。

山内 都会に勤め、毎日ほとんどの時間をエアコンの効いた環境だけで過ごすような生活は、やはり本来の自然ではないですね。
さらにその中で無理を重ねていたら、身体が悲鳴を上げるのも無理はありません。

まずは身体を緩めて、自然の流れに自分を添わせる。
秋なら、森に行ってきのこ狩りをして土鍋で炊き込みご飯を作り、季節の移ろいを楽しむとか、次の季節に向かう体調管理にちょっとした香りの手仕事をしてみるのも良いですね。

自分も自然の一部なんだと気づけたら、本当のホリスティックの流れにつながっていくのではないかしら。

野見山 本当にその通りですね!

心理学者の河合隼雄さんが、

身体の不調は魂からの呼びかけ。何をしたいの? どう生きたいの? と問いかければ症状を通して教えてくれる

と、ご著書で書いていました。

身体は何を伝えたいのか?
身体は複雑で変化する自然。だから、技術や治療など、外からの何かによる一方的なコントロールは難しい。

セラピストの役割は、クライアントの身体や生活習慣をコントロールするのではなく、クライアントと対話すること。
また、クライアントも身体と対話し、身体の中で何が起こっているのかを見ていくこと。

薬などで安易に対処する前に、症状、特に繰り返される慢性症状は何を知らせるためのノックなのか、身体と対話してほしいです。

ここに気づくことで、更年期の過ごし方も大きく転換するんじゃないでしょうか。

ホリスティックな視点で更年期も見つめ直す

山内 ヨーロッパでは、閉経を迎えると、“ハッピーメノポーズ!(閉経おめでとう)”とお祝いの花束を贈ったりします。
そして、「これからは白いスカートやパンツも気にせず履けるようになるわ」と、ポジティブに閉経を捉えて、人生の次のステージのスタート地点と受け止めています。

日本では、初潮はお赤飯でお祝いするのに、閉経は「女が終わった」とネガティブに捉えて、誰にもお祝いをしてもらえない……寂しすぎますよね。

私のサロンでは、ホリスティックメノポーズプログラムをご利用の方が閉経したときは、白い花束とともにランチをご一緒して、お客さまの新たなスタートをお祝いしております。

閉経は、

・受け入れる準備ができ
・自分の弱点も受け止め
・肩肘張らず
・自分とは何かが見えるようになっていれば、

人生の充実期を迎えられるときなんです。

私自身、50歳のときよりも62歳の今のほうが元気で体力があり、好きなことに目を向け、自分なりの仕事の仕方も見えています。

野見山 そうですね。自分の内側、自分の身体としっかり対話をしていけば、心から日々を楽しめるようになれるのではないでしょうか。

それと、シンプルに自然に触れることもおすすめです。

編集部 奇しくもお2人とも、かつては競争社会の中でバリバリと働いてこられた経験があり、今は海辺の自然豊かな場所で暮らされていますね。とても素敵です!

 

更年期ケアで、セラピストの役割は?

山内 どのセラピストさんも、素晴らしい技術をお持ちで、ご自身のケアに誇りを持たれていると思います。

ただ一つだけ。決めつけは禁物です!

更年期の症状だと思っていたら別の病気だったということもあります。例えば、ホットフラッシュは甲状腺肥大の症状の場合も多いです。確かな知識と謙虚さ、人脈を持って、医療機関に頼るべきときはそうすることも大事だと思います。

野見山 そうですね。

ホリスティック観点から見て、すべてのケアにおいて「これがベスト」というものはないと思います。「これしかない!」と一方向から押すと、片方にギュッと偏ってしまいますよね。

それから、1人ひとりがセルフケアの意識を持つことも大事です。「今日は足が冷えている。ゆっくりお風呂に浸かろうか」など、身体と対話し、運動なども含めて、セルフケアを取り入れましょう。

山内 更年期になっても若い時と同じペースを続けると、今後の人生で不調が続いてしまいかねません。

クライアントの人生を良い方へ進めていくお手伝いを、セラピストだからこそできると思います。

野見山 人生100年時代。その後半も、充実した豊かなものにしていけたら良いですよね。

編集部 単に更年期のケアのみならず、生き方そのものを考えさせられるお話でした。本日は本当にありがとうございました。

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