メルヘンをテーマに、絵本や児童文学の世界の香りを創造している「GREEN GRASS」主宰の豊泉真知子さん。全12回に渡り、セラピーライフで『メルヘン』をテーマに多数の童話の香りを制作してもらいます。
果たして、どんな香りに仕上がるのでしょうか?
文◎豊泉真知子
第1回目のメルヘン童話
ドイツの児童文学者プロイスラーの『小さいおばけ』
この童話は、作者のオトフリート・プロイスラーが子どもの頃、祖母が何度も語ってくれた幽霊話をもとにして書かれました。 「白い女」の幽霊話は、南ドイツのシュヴァーベルン地方に発祥した、ヨーロッパの貴族・君主の家系であるホーエンツォレルン家にゆかりのあるお城に多く語られています。怖くて不吉な幽霊ですが、プロイスラーは、見事に好奇心旺盛な可愛いおばけのお話しに変身させました。
ドイツのフクロウ城というお城に、ひとりの小さいおばけが住んでいました。 気の良いおばけは、こちらが怒らせさえしなければ、人を怖がらせることはありません。
昼の間は、お城の屋根裏部屋にあるオークでできた重いチェスト(長持ち)の中で眠っています。役場の時計が夜の12時を打つと、ようやく目を覚まし、13の鍵束でさっとひとふりすると、お城の扉や門が開き、お城の中を自由に飛び周ります。
ある夜、仲良しのミミズクのシューフーの話から、昼の世界をひと目見たくてたまらなくなりました。
ある日のこと、願いが叶って昼間に目を覚ました小さいおばけは、さっそく見て回ろうと出かけましたが、日の光にあたったとたん、真っ白だったからだが真っ黒になってしまいました。黒い怪人と呼ばれ、ひと騒動を起こします。その上、道に迷ってしまって、さあ、大変です。それに、昼の暮らしが騒がしくて、お城に帰りたい気持ちがだんだんと強くなります。
おばけは、仲良くなった子どもたちに鍵束を渡して、夜のお城に行ってもらいました。三人の子どもたちは、夜のお城は怖かったのですが、鍵束のおかげと、シューフーの知恵で、無事に小さおばけは森に帰り、白いおばけに戻ることができました。
『小さいおばけ』自然香水づくり
香りのイメージ
森に埋もれ、誰も近寄ることの出来ない重く威厳のあったお城。そのお城の庭に咲いていた、ほのかなバラの香り。男性的な仕上がりの香水です。
- 古城
- ドイツにはたくさんの古城があります。おばけの居る屋根裏部屋は窓が小さくて、暗い土の匂いのする部屋です。
- 深い森
- 人の住まない古城の周りは、うっそうとした深い森が茂ります。
- バラ園
- 荒れ果てた庭にもバラ園の名残があったことでしょう。
ドイツのシュヴァーベン地方にあるホーエンツォレルン城
<作成> 〜古いお城の香り〜
ハートノート5滴:ローズトルコ2(お城のバラ園)、マートル1、パルマローザ1、ナルデ1(古城)
ベースノート5滴:ベチバー2、サンダルウッド1、乳香2(古城)
ヘッドノート9滴:トウヒ3、サイプレス2(森)、オレンジ4
ニュアンサー1滴:カルダモン1
※ホホバオイルで作成。全体で5mlに。
参考文献)オットフリート・プロイスラー『小さいおばけ』訳はたさわゆうこ(徳間書店)、『手作りの自然香水ハンドブック』(東京堂出版)
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著者プロフィール
豊泉真知子(とよいずみまちこ)さん
アロマプランナ-、ドイツの精油タオアシス輸入総代理店GREEN GRASS主宰、ドイツの本の出版企画。ヒルデガルトの植物を学ぶ会代表。ドイツ・ヒルデガルトの旅を毎年7月企画。メルヘンと香り展開中。
取材協力◎GREEN GRASS TEL048-886-6613 http://www.egreengrass.com/