メルヘンをテーマに、絵本や児童文学の世界の香りを創造している「GREEN GRASS」主宰の豊泉真知子さん。全12回に渡り、セラピーライフで『メルヘン』をテーマに多数の童話の香りを制作してもらいます。
果たして、どんな香りに仕上がるのでしょうか?
文◎豊泉真知子
第5回目のメルヘン童話『小人のハナスケ』
~19世紀に最もよく読まれた、創作メルヘン作家ハウフの『小人のハナスケ(鼻のこびと)』
ヴィルヘルム・ハウフは7歳で父を亡くした後、母方の実家で育ちました。大の読書好きの祖父がたくさんの蔵書を自由に使わせてくれたので、2人の妹に話術も巧みに空想の物語を語って聞かせたほど、物語作者の才能に恵まれた子どもでした。大学卒業後、男爵家で子どもたちの家庭教師をしながらお話を創って聞かせていたところ、男爵夫人の手配で物語を出版できることになりました。こうして、作家ハウフが誕生したのです。ハウフは天才作家としてヨーロッパ中を歴訪。しかし、1827年に旅先から帰ると、あっという間に死んでしまったのです。この時、ハウフは25歳でした。 ハウフの三部作は『メルヘン年鑑』と呼ばれ、小気味良いメルヘン集『隊商』、奴隷たちの話す物語『アレッサンドリアの首長と奴隷たち』(「小人のハナスケ」収録)、超自然的要素の『シュッペッサルトの宿屋』と続きます。
12歳の少年ヤーコブは、野菜やくだものを市場でならべる母親の手伝をしています。その日、年とった女の荷を運び、その家でスープを飲んだ後、少しの間居眠りをしてしまい、大急ぎで戻りました。しかし、母親に追い払われ、もう7年も経っていて、背丈は小さく、鼻は長くみっともない姿になっていることに気づいたのです。行き場がなくなったヤーコブは、魔女に料理を伝授された腕を使って、国王の宮殿の副料理人となり、「鼻のこびと」と呼ばれます。その後、魔法にかけられたガチョウの魔術師の娘を救ったおかげで、隣国の大公が注文した「パイの女王スツェレーヌ」を作ると、そこに「ニースミトルスト(くしゃみ草)」が不足と怒鳴られ、古い栗の木の下だけに、新月の時に咲くその草は、茎と葉は青みがかった緑色、黄色の斑点のある、燃えるように赤い花で、ようやく探し出します。なんとその香りは、魔女のスープに入っていた草だったのです。
さて、ヤーコブにかけられた魔法はどうなるのでしょう……。
『小人のハナスケ』自然香水レシピ
香りのイメージ
魔法のスープは、魅惑の香り。スパイスが花を引き立てうっとりする香水に。
市場のスパイス(フランス)
- 市場のスパイス
- 市場では食欲をそそる香りが漂い、にぎわっています。
- 魔女
- あごまで下がったわし鼻の老婆は、醜いほうの魔女です。
- 魔女の薬草
- 不思議な甘い香りの薬草をグツグツ煮て、魔法の薬を作ります。
<作成> ~魔女のスープの香り~
市場の野菜(ドイツ)
ハートノート6滴:チャンパカAbs.3(花)、ゼラニウム1、カモミール・モロッコ1、マージョラム1(ハーブ)
ベースノート3滴:シストローズ1、乳香インド1、トルー1
ヘッドノート9滴:フェンネルスィート2、バジル1、カルダモン2(以上スパイス)、レモン4
ニュアンサー1滴:スターアニス1(スパイス)
※ホホバオイルで作成。全体で5mlに。熟成は2ヶ月かかります。時々香りを確かめましょう。
参考文献) ヴィルヘルム・ハウフ作/リスベート・ツヴェルガー絵/池内紀訳『鼻のこびと』(太平社)、『手作りの自然香水ハンドブック』(東京堂出版)
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著者プロフィール
豊泉真知子(とよいずみまちこ)さん
アロマプランナ-、ドイツの精油タオアシス輸入総代理店GREEN GRASS主宰、ドイツの本の出版企画。ヒルデガルトの植物を学ぶ会代表。ドイツ・ヒルデガルトの旅を毎年7月企画。メルヘンと香り展開中。
取材協力◎GREEN GRASS TEL048-886-6613 http://www.egreengrass.com/