メルヘンをテーマに、絵本や児童文学の世界の香りを創造している「GREEN GRASS」主宰の豊泉真知子さん。全12回に渡り、セラピーライフで『メルヘン』をテーマに多数の童話の香りを制作してもらいます。
果たして、どんな香りに仕上がるのでしょうか?
文◎豊泉真知子
第6回目のメルヘン童話『マレーン姫』
〜ドイツを代表する、おなじみグリム兄弟の童話の一つ〜 『マレーン姫』Jungfrau Maleen
18世紀の後半から19世紀初めは、フランスにナポレオンが現れ、ドイツもナポレオンの軍隊に占領され、当時のドイツはフランスの属国のような存在でした。そんな中、グリム兄弟は自国のゲルマン民族の宝である民間伝承、神話、伝説、民謡等ドイツ語を研究しながら集め、約200のお話を書いています。
グリムのメルヘン集は7回にわたって改訂され、この『マレーン姫』は第6版に初めて登場します。『マレーン姫』のような「伝承について書かれた本」からのお話は40話ほどあり、『完訳グリム童話集』にすべて収められています。
愛し合っている王子と結婚したいとのマレーン姫の申し出に怒った王は、真っ暗闇の搭の中に侍女をつけて、7年分の食べ物と飲み物を与え塞いでしまいます。
時は過ぎ、食料も無くなり7年経ったことを知り、2人で塔に穴を開けてようやく外に出られました。しかし、お城はなく周りは焼け野原。道端のイラクサで飢えをしのぎ、辿り着いた所があの王子が住むお城で、しかも婚礼の日が近づいていたのです。王子の花嫁は心根が曲がり見てくれも醜かったので、自分の部屋に閉じこもっていました。その花嫁に食事を運ぶことになったマレーン姫は、婚礼の当日、花嫁から自分の替わりを務めるよう命令されます。こうして、美しい花嫁ができました。
花嫁がマレーン姫とそっくりなので、王子はびっくりします。教会に行く途中、マレーン姫はイラクサの茂みに、つぶやきます。「イラクサや/わたしの小さいイラクサや/なぜここにひとり立っているの/わたしはあの時をわすれない/わたしはおまえをやきもせず、にもせず食べたのだっけね」。王子はいぶかりますが……。
本当の花嫁は、マレーン姫はその後どうなったのでしょう?
『マレーン姫』自然香水レシピ
香りのイメージ
ネロリやバーベナなどで、爽やかで優しく初々しい香りに!
コーブルクのお城
お城の塔 ヴェルニゲローデ
- 塔の中
- 7年間も閉じ込められた塔の中では、王子への愛だけが支えになったことでしょう。
- イラクサ
- 触ると痛いイラクサですが効能は数知れず、ドイツでは復活祭までの若い葉を摘んで野菜として調理して食べる春の香りです。
- 花嫁
- 苦労の末に花嫁になって、幸せな香りとなります。
<作成> ~初々しい花嫁の香り~喜び
触ると痛い、イラクサ
ハートノート5滴:ネロリ2、アイリス2、イランイラン1
ベースノート4滴:ベンゾイン2、マートル2、ローズウッド1
ヘッドノート9滴:オレンジスィート2、ビターオレンジ2、バーベナ2、バジル2、プチグレン1
ニュアンサー1滴:コリアンダー1滴
※ホホバオイルで作成。全体で5mlに。熟成は2ヶ月かかります。時々香りを確かめましょう。
参考文献)グリム兄弟作/相良守峯訳『グリム童話集3 マレーン姫』(岩波少年文庫)、金田鬼一訳『完訳グリム童話集5 マレーン姫』(岩波書店)、モニカ・ヴェルナー著『アロマテラピー実践事典』(東京堂出版))
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著者プロフィール
豊泉真知子(とよいずみまちこ)さん
アロマプランナ-、ドイツの精油タオアシス輸入総代理店GREEN GRASS主宰、ドイツの本の出版企画。ヒルデガルトの植物を学ぶ会代表。ドイツ・ヒルデガルトの旅を毎年7月企画。メルヘンと香り展開中。
取材協力◎GREEN GRASS TEL048-886-6613 http://www.egreengrass.com/