メルヘンをテーマに、絵本や児童文学の世界の香りを創造している「GREEN GRASS」主宰の豊泉真知子さん。全12回に渡り、セラピーライフで『メルヘン』をテーマに多数の童話の香りを制作してもらいます。
果たして、どんな香りに仕上がるのでしょうか?
文◎豊泉真知子
第7回目のメルヘン童話『小さな王さま』
画家が持つファンタジーと、その美しい挿し絵に魅了されて出来た『小さな王さま』
『小さな王さま』は、ウィーン生まれの画家ハンス・ペラルが22歳の時、頭の中のストーリーだけで12枚の水彩画を描いたことから始まりました。そして、1906年に創立したばかりの宮廷出版人がつくった「真の芸術を、絵と文章で子どもたちに」を目標とした児童図書出版社により、ミュンヘンの作家フリッツ・フォン・オスティーニの文で出版されます。
この絵本は、12色刷りの石版画の表面に金を刷り込んだ最も高価な絵本の一つとなり、またユーゲント様式やウィーン派の傑作の一つとなりました。
女王ヘルツライデは、隣国の立派な王の婚約者でした。ところが、魔法使いアマラが、隣国の王を一匹の金色の蛇に変えてしまい、魔法使いの息子と結婚させられてします。アマラは魔王と契約を結んでいて、彼女の望むことはすべて叶えるようになっていました。
蛇にされた王さまには、3歳の王子フィデリンがいました。ヘルツライデは、自分の娘であるフルディーネが大きくなったら、フィデリンと一緒にさせようと思っていたのですが、アマラに気づかれ、王子をはじめ国の人々はすべて小人にされてしまいます。
娘が15歳になった時、母が最期の時を迎え、三つのことを遺しました。「この王国で女王となること。困った時に吹けば助言を与えてくれるたて笛を吹くこと。将来の夫は、外見よりも心やさしい人を選ぶように」と。
ひどい求婚者ばかりで困ったフルディーネは、バラの木が植えてある庭園でひそかに笛を吹きます。すると金色の蛇が現れ、「恐れないで変わらぬ勇気で耐えるように」と言い、そして、小さな求婚者が現れ、「愛が魔法を解くだろう。母上の言葉を信じなさい」と助言します。こうして、フルディーネと小さな求婚者は婚約します。
この祝宴の新月の晩に、蛇の王さまと小さな王によって、魔法使いアマラは自らつくった霊薬により、魔王に魂をとられます。
その後、小さな王フィデリンと蛇にされた王の魔法は、フルディーネの愛はどうなったのでしょうか……。
『小さな王さま』自然香水レシピ
香りのイメージ
金色の蛇にされた王が守る家族への愛。バラが咲き誇る庭園の優しい愛の香り!
ドイツ、マリアラーハ修道院のバラ
- 魔女アマラ
- 魔王に魂を与えても、魔法を使いたかった悲しい魔女。魔女の霊薬(毒薬)は、新月の夜につくられます。
- バラ園で見守る蛇の王の愛
- バラの美しさの中で、金色の蛇が見守る息子と恋人だった王女の娘への愛
- 小さな王さまの勇気
- 小さくても魔法と戦う勇気。父に見守られて成長する心優しい王子
<作成> ~ばらの庭園の香り~
ドイツ、ヴュルツブルク お城のバラ
ハートノート5滴:ローズブルガリア3、ゼラニウム・ローズ1(バラ園の香り)、マージョラム 1(悪魔を追い払う香り)
ベースノート4滴:サンダルウッド1、ローズウッド2(バラを引き立てる麗しい樹木の香り)、シストローズ1(茎に含まれる樹脂が深い愛情の香りに)
ヘッドノート10滴:ブラッドオレンジ3、ライム2、ラバンジンsuper2、モミ2、セーボリー1(勇気をもたらすサチュロスの香り)
ニュアンサー1滴:ペッパーブラック1(魔女の霊薬に入っていたかもしれません)
※ホホバオイルで作成。全体で5mlに。熟成は2ヶ月かかります。時々香りを確かめましょう。
参考文献)オスティーニ文/ハンス・ペラル絵/なかがわひろし訳『小さな王さま』(ほるぷクラシック絵本)、/モニカ・ヴェルナー著『アロマテラピー実践事典』(東京堂出版)
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著者プロフィール
豊泉真知子(とよいずみまちこ)さん
アロマプランナ-、ドイツの精油タオアシス輸入総代理店GREEN GRASS主宰、ドイツの本の出版企画。ヒルデガルトの植物を学ぶ会代表。ドイツ・ヒルデガルトの旅を毎年7月企画。メルヘンと香り展開中。
取材協力◎GREEN GRASS TEL048-886-6613 http://www.egreengrass.com/