日本人が古来より生活の中に取り入れてきた植物の力。そのなかでも香りや薬効が豊かで、古くから日本の森に生息し、日本人の健康と生活を支えてきた “和製ハーブ ”クロモジ(黒文字)に、近年注目が集まっている。
クロモジは、日本の広い範囲で山地に自生するクスノキ科の落葉低木。リラックス作用が期待されるリナロールを主成分とするよい香りがあり、古くから楊枝や香木、枝葉を煎じてお茶にするなどして使われてきた。
クロモジ研究会(https://www.kuromoji.jp/)によると、近年クロモジの抽出エキスや精油成分において意欲的に研究がなされ、機能性に関するエビデンスデータが発表されている。最新の研究で、クロモジのエキスに含まれるポリフェノールの一種がウイルスの増殖を抑えることが分かり、看護師ら男女134名を対象に行った試験では、インフルエンザ予防効果が報告されている(伊賀瀬道也氏ほか「薬理と治療」vol.46、2018年)。またこれまでにも、クロモジ精油がもつリラックスや免疫機能改善など、多くの効果が発表されている。
改めてその価値が見直されているクロモジは、全国各地で新たな森林資源として活用の取組みが広がりつつある。愛媛県上浮穴群久万高原(かみうけなぐんくまこうげん)では、住民有志により2018年5月にNPO法人「くまーるの森びと」が設立された。クロモジアロマ製品の製造販売や森林環境体験を柱に、地域活性化を目指し始動が行われている。
長野県では「森林の里親促進事業」として、駒ヶ根市が薬酒の原料としてクロモジを扱う養命酒製造株式会社と「里親契約」を結んでいる。地域と企業が互いに協力して、森林の整備とクロモジ育成の両立を目指す。また、山口県山口市でも養命酒製造株式会社とともにクロモジの試験栽培に取り組んでいる。
一般にはまだあまり存在そのものが知られていないクロモジ。だからこそ今後ますますその機能性での研究と、市場の広がりが期待される。