2019年11月11日、東京都・渋谷区の養命酒酒造株式会社にて「クロモジ研究会」主催の『インフルエンザ予防 メディアセミナー』が開かれた。同研究会は、日本全国に自生し「薬木」や「和製ハーブ」として再発見されつつあるクロモジ資源の保護と産業の発展、健康増進への貢献を目的とする。クロモジにはその抗菌作用が注目されていたが、今回最新の機能性研究により、新たにインフルエンザ予防における有効性が確認された。
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養命酒製造・松見繁氏
セミナーは3つの講演からなり、始めに養命酒酒造株式 商品開発センター 素材研究グループリーダー 松見繁氏より「クロモジについて〜抗ウイルス研究成果を中心に〜」と題し、クロモジの抗ウイルス効果と仕組みが説明された。2018年6月に行われた養命酒酒造株式会社と国立研究開発法人国立国際医療研究センター研究所との共同研究によると、クロモジエキスに含まれるポリフェノール「プロアントシアニジン」は、細胞内の抗酸化酵素を活性化させることが分かった。ウイルスは活性酸素を増殖させることで細胞を弱らせ自らを増殖させるが、抗酸化酵素は活性酸素を抑制するため、ウイルス自体の増殖も抑えたとみられる。
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愛媛大学・伊賀瀬道也氏
続いて愛媛大学医学部附属病院 抗加齢・予防医療センター センター長 伊賀瀬道也教授による、最新の「クロモジエキスのインフルエンザ・風邪予防に関するヒト試験について」の最新研究発表に。同病院に勤務する看護師135名を対象に、クロモジエキス67mg配合の飴を摂取する二重盲試験を実施。1日3回摂取、12週間の試験期間中、クロモジエキス配合飴摂取群では2名、プラセボ飴摂取群では9名がインフルエンザに感染。このことから、クロモジエキスを接種した群の方が有意に感染者数が少ないという結果が得られた。
インフルエンザ罹患を起こしやすい上気道の細胞に対し、クロモジエキスが留まることで予防効果を示すことが分かった。
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信州大学・河原岳志氏
この研究結果をもとに、抗ウイルス効果の持続時間を研究したのが、信州大学農学部 河原岳志准教授。河原准教授によると、培養細胞をクロモジエキスに浸す処理をした後、培養液からクロモジエキスを取り除き24時間後にウイルス感染させたところ、ウイルス増殖指標(ウイルスRNA量)が低値にとどまり、増殖抑制が確認された。その持続時間は、同じく抗ウイルス効果があるとされる茶カテキンの場合、処理後12時間でほぼ効果がなくなるのに対し、クロモジエキスでは24時間後までウイルス増殖を抑える効果が見られた。
注目すべきは処理時間の効率。伊賀瀬教授の実験でも用いられたクロモジエキス配合飴の場合、1粒摂取するのに約8分を要するが、同様に8分の処理で実験を行った際に5時間後も抑制が確認された。8分間を繰り返し処理することで抑制効果は上がり、また持続性も延長。3回処理を繰り返した場合で19時間の抗ウイルス効果持続が確認された。予防に限らず、感染後の細胞にも効果が見られるなど、今後のインフルエンザ予防に有用な可能性が高まった。
また、会場外のロビーには全国のクロモジ製品が陳列され、日本全国で古来よりクロモジが親しまれていることがうかがえる。その成分や効果の最新研究が進めば、より人々への健康効果やクロモジ産業の発展が期待できそうだ。