自宅やマンションの一室などの個人のプライベートな空間を活用したサロンは、セラピスト1人ひとりの個性が詰まった〝癒しの空間〞です。1対1の関係を大切にした究極のおもてなしや、想いを込めた独自の技術とサービスを展開することができ、セラピストにとっては“理想”を具現化できる場所になるでしょう。
お客さまに愛されるプライベートサロンを作るには、「集客」「空間作り」「メニュー作り」「接客」の4つのテーマに注力する必要があります。セラピスト2月号では「プライベートサロン特集」を掲載しており、それぞれのポイントについて専門家が解説します。
その中のひとつ「空間作り」について、個人経営のサロンや治療院を主に空間コーディネートをしているCocotie(以下、ココティエ)代表の難波英津子さんが詳しく解説。まずは、サロンの印象や雰囲気を大きく変えることができる「空間作り」について、難波英津子さんにお話を伺いました。
お客さまファーストの理想のサロン空間を目指しましょう!
インテリアデザイナーの難波さんは内装に関する相談への対応はもちろん、家具や調度品についても造詣が深く、また収納アドバイザーの有資格者であるため収納計画にも応じています。さらに、クライアントから希望があれば、DIYを一緒に作業を行う神対応も! 一例をあげると、“壁”もDIYで作っています(壁は、退去時に現状復帰が必要なのでDIY素人には難しいのです)。
そこで、「サロンの空間づくり」に必要な基本的な考え方を、その土台となった難波さんの経験とともに紹介します。
ポイント1● お客さまの行動をイメージして計画する
現在の活動をされる前、元々は個人宅のトータルコーディネートを担当していた難波さんは、社内の月間提案プラン数・商品受注(採用)率が常にトップでした。その後出産・育児を機に一度インテリア業界から離れたものの、育児がひと段落し、大好きなインテリアの仕事に復帰する決意をしたときに「個人宅ではなく、インテリアが最も活きる“お店”のコーディネータをやりたい」と思い至り、サロンなど店舗のインテリアを勉強し、1つひとつ実績を積んでいきました。
人気サロンの移転改装に携わった際には、“お客さまがどこでどのような行動をとるか”、例えばバッグをどこにどう置くかまで見聞きしたといいます。このようにお客さまの行動を具体的にイメージすることができるようになった難波さんは、今もお客さまの動きに合わせたお客さまファーストなお店作りを心がけています。
ポイント2● 家具選びやセルフリノベーションで“統一感”を
空間作りにおいてもっとも重要なのが「統一感」です。そのためにも、内装や家具1つひとつがサロンコンセプトと合うか、空間とマッチするかをクライアントと一緒に検討していきます。その際に「DIY」を行うことで、金銭面のメリットだけでなく、理想のイメージに近づけるためのさまざまな工夫ができるといいます。
難波さんがDIYを行うのには、元々モノづくりが好きなことに加えて、ご主人の海外赴任に同行したイギリス生活の経験も大きく影響しています。“住”を大切にする文化のイギリスでは、住宅をセルフリノベーションすることが当たり前であり、それをよく表しているのがホームセンターの品揃えです。なんとドアや便器までも売っているそうです(!)
しかも「どのお宅も雰囲気は違うのに、統一感があって洗練されていた」ことに難波さんは大きな刺激を受けました。また、家の中でも“パブリック”と“プライベート”な空間が明確に分かれており、「いつ来客があっても迎えられる、居心地良い空間」を数多く見てきた経験が、現在のサロン空間作りにもつながっているようです。
ポイント3● 収納は内装計画の時点で考える
どんなにインテリアが素敵でも、収納が上手にできていなければ台無しです。難波さんは個人宅のトータルインテリアのお仕事をしている時にもそれを痛感し、その後「収納アドバイザー」の資格を取得します。インテリアの仕事に復帰する前には、収納アドバイザーとしての仕事も行っていました。
サロンでも、内装の計画段階で、収納のことまできちんと考えられていないことは少なくありません。例えば、生活感が出てしまうモノは、お客さまの目になるべく触れないようにします。さらに、セラピストも快適に過ごせる収納計画を考えることが、とても大切なのです。
難波さんは、“狭い”、“レイアウトしにくい間取り”など難しい案件にも数多く対応してきた経験から、「第一印象と視覚的な工夫」「動線とゾーニング」「高級感とコストバランスの工夫」「非日常感と細やかな配慮」「サロンの雰囲気と照明」の5つの視点が大切であるといいます。こちらは、ぜひ誌面の特集をご覧ください。
2025年に流行る⁉︎ ユニセックスなサロン
2025年の始まりにあたって、雑誌セラピスト2月号では2025年に流行るサロンの内装を予測しています。そのひとつが“ユニセックス(ジェンダーレス)”な雰囲気のサロンとのことで、難波さんに詳しく伺いました。
「近年、セラピストやお客さまの中に男性が増加していることから、従来の女性向けフェミニンやエレガントなサロンスタイルよりも、男性でも違和感なく過ごせる、甘さを抑えたユニセックスなテイストのサロンスタイルが増えつつあります。具体的には、コンクリートやアイアンといったインダストリアルな素材を内装に取り入れつつ、柔らかな風合いのシアーレースカーテンや曲線的なデザインのアイテムを組み合わせることで、無骨さが前面に出過ぎない上品なユニセックススタイルです。今年はこうした雰囲気の店舗が、サロンスタイルトレンドの1つになると予測されます」。
プロフィール
難波英津子さん
Cocotie(ココティエ)代表/サロン空間プロデューサー。サロン・治療院など個人経営の店舗空間に特化したインテリアコーディネーターとして活動。「全国どこでも可能な限り対応します」と頼もしい、空間作りのエキスパート。