大好評発売中の『セラピスト』2月号。その第2特集「知っているようで知らない タオルの選び方、使い方」では、タオルの選び方や使い方、セラピー効果についてご紹介しています。その制作を進めていく中で、タオルに関わる皆さまから、タオルにかける想い、タオルを通じて皆さまに届けたいこと、素敵なエピソードなどをさまざまに聞くことができました。そんな、タオルにまつわる小さな物語をご紹介します。
構成・文◎本誌編集部
〜Contents〜
間伐材の杉の木から生まれた木のタオル
徳島県のほぼ中央にある上勝町は、森林率85.6%、人口およそ1,500人(高齢者率53.2%)という、四国でも一番小さな山あいの町です。この小さな町で、地元で育った杉の間伐材から生まれたのが「KINOF」シリーズです。
間伐材の杉を細かなチップ状に粉砕、次にそこから繊維を抽出して麻糸と混紡。この“木の糸”を平織りや綾織り、ガーゼなどの生地に仕上げていきます。さまざまな“木の布”を作ることができますが、中でもKINOFでは、さらりと空気をはらんで軽い、シンプルなワッフル生地を採用しています。
このKINOFの製品。見た目はシンプルなワッフル生地で、植物由来を感じさせるシャリ感がありながら、想像を覆すような柔らかさとふわふわの心地よさが大きな魅力。リネンのような軽さとさらりとした質感、乾きやすさを兼ね備えています。使い始めはやや硬さが残りますが、洗うたびに少しずつ柔らかく、ふんわりした質感に育っていきます。ワッフル生地が空気を含むので、夏は涼しく冬は暖か。さらに、自然素材100%なので、山に埋めても土に還るタオルです。
従来、そのまま捨ておかれ、朽ちていくだけだった間伐材に生命を吹き込み、地域の活性化にも一役買っているKINOF。さらに、その優れたプロダクトは各地から高い評価を得、大手量販店やセレクトショップとの取引もスタートしています。
小さな町から木材利用の可能性を大きく広げたKINOFですが、今後は全国の山林地域とも連携していくとのことで、連携先の1号は長野県の根羽村だとか。KINOFから、ますます目が離せません。
〜麻という素材に惚れ込んで〜
株式会社ケンランドは、山形市にある70年超の歴史を持つニット会社。タオルをはじめとする、麻を用いた特徴的なニット製品の数々は、リネンやヘンプ、ラミーといった麻という素材に惚れ込んだ社長の大沼秀一さんの、30年以上にわたる熱い想いから誕生した唯一無二の製品です。
「うちは地方の小さな会社ですが、それでも自分たちの仕事が世の中の役に立ち、社会に貢献できるようにという想いで70年以上やってきました。そんな中でたどりついたひとつの答えが麻だったのです。『オーガニックコットン』とわざわざ言うのは、全世界の農薬のおよそ1/3が綿花栽培に使われていることの裏返し。その点、リネンはほとんど農薬を使わず、水を与える必要がない環境でつくられ、自然に育つのです。環境に限りなく優しく、しかも機能性も高い。これで何か作れないかと考えたのが始まりでしたが、そこから30年以上の紆余曲折がありました……」
欧州では、麻の布で食器やカトラリーをピカピカに磨き上げます。また、日本のように洗濯物をお日様の下で干す文化ではないため、寝具やタオルなどにもリネンが多用されています。麻の持つ、汚れがつきにくく、抗菌性が高く、カビにくく、吸水性と速乾性を兼ね備え、夏は涼しく冬は暖かいという機能を、古くから活用してきたのでした。
麻というと、日本ではシャリ感のある夏の素材というイメージですが、ケンランドのヘンプやリネンのニット生地は非常に軽く柔らか。
麻の常識を変えるようなヘンプ・リネンのニットタオルは、CELC(ヨーロッパリネン連盟)でも驚きを持って迎えられています。
吸水性に優れ、伸縮性も良いニットタオル。シャンプー後の髪に巻けばドライヤーの使用も最小限に抑えられます。静電気防止効果も高いので、人の身体に優しい素材でもあります。知れば知るほど奥深い、この素材の魅力を、ぜひ体感してみてください。
TAKEFUタオル
TAKEFUのタオルは、心と身体を癒すタオルです。肌に触れたときの心地よさと、それによって身体が弛む感覚を、ぜひお楽しみください。
TAKEFUは、環境にも人にも優しい、自然から生まれ、自然に還る繊維です。
2008年、TAKEFUは竹を原料としたレーヨンとして商標登録されました。これにより、素材表記は「レーヨン(TAKEFU)◯◯%(原料に竹を使用)」となりました。
名前から誤解されやすいのですが、レーヨンとは、木や竹などの植物から作られる再生繊維のこと。石油を原料とするポリエステルやナイロン等の合成繊維とはまったく異なります。
TAKEFUは、制菌性、消臭性、制電性、吸湿・吸水性、温熱効果などの高い機能を持ち、さらになめらかな肌触りと、静電気がほぼゼロという人の身体への優しさも兼ね備えています。そのため、赤ちゃん、ご年配の方、肌トラブルに悩む方にもおすすめできます。
同社が初めてタオルハンカチとバスタオルを開発したのは2004年のこと。
当初は、柔らかさと軽さを重視した仕様のものを試作しましたが、特にタオルハンカチやフェイスタオルで、濡らして手洗いして絞ると糸が切れるというクレームが発生。次の生産ロットで、地糸に従来の2倍の太さの糸を使用し、さらに2本の糸を1本の糸に捻り合わせる製法を採ることでこの弱点を克服。結果として、糸が丈夫で、目付が高く、風合いもふっくらとした超高級タオルが完成しました。
タオルの地糸には綿を使うのが一般的ですが、中からのカビの発生を抑えるため、地糸にも竹の糸を使い、竹布100%を実現したのです。これは、あくまで品質を追求する同社だからこその挑戦でした。
TAKEFUの開発者である相田雅彦がモノづくりを通じて願い続けてきた想いは、株式会社ナファ生活研究所の代表取締役であり商品開発担当の相田雅彦氏のエッセイ『河の流れのように』にて詳しく綴られています。
丹念にひろって誕生した上質なタオル
やぎみつタオル(八木満タオル株式会社)は、日本一のタオルの産地・今治で60年以上の長きにわたってタオルを作り続けてきた老舗。
その商品開発には、とことんまでタオルが直接肌に触れる相手——サロンで施術を受けるお客さまの満足度を追求しようという想いが詰まっていました。
サロン向けのタオルとして同社が推すのは「エステタオル」シリーズと『セラピスト』2月号にも登場した「アロマタオル」シリーズの2ラインです。
エステタオルは、業務用ならではのタフさとお客さま本位の癒し効果を両立させたタオルです。匠の技により、ループが抜けず、ほつれず、いつまでも新品同様の風合いを保ち続ける丈夫さは「12年も使ってくださったというお客さまがいらっしゃいます」という驚異的なもの。一方で、しっかりとした生地ながら通気性も抜群! 空気の抜けやすい独自の編み方をしているとのことで、「他では真似できないですね」と担当者は胸を張ります。
タオルなのにループがない! そんなインパクトのあるアロマタオルは、一般的なタオルのおよそ1/3という軽さをもち、また厚みもおよそ1/5という薄さも実現しました。その特徴ゆえに、洗いやすさ、乾きやすさは抜群。洗濯時に必要な水が少なくて済み、乾燥機を使わなくとも部屋干してすぐにしっかり乾きますので、長く使えば使うほどエコ。さらに、綿花の繊維を埋めてしまう柔軟剤を使わなくても柔らかな風合いを保つので、柔軟剤の香りが苦手なお客さまにも安心です。
「タオルが変わるとお客さまも変わるのです」(やぎみつタオル)
その品質に惚れ込んだサロン経営者が、業務用のみならず個人的な贈り物やご自宅用にも購入されているというのもうなずけます。
“絹と暮らす心地よい毎日”を
シルクのストールや冷えとりグッズは一般的ですが、絹100%の贅沢なパイルタオルも実在したとは……! そんな特別感のあるタオルが、株式会社大醐の「絹屋」ブランドのなかにありました。
お客さまに商品を気に入って買ってもらった結果、
実はそれが世の中のためになっていた。
そんな商品を作りたい。
同社は、ものづくりへの想いをそう語ります。 商品の企画を生業にしている同社のような企業にとって、今の日本で起きている大きな問題は、ものづくりを担ってくれている工場が、次々と倒産・廃業で姿を消していることだと言います。このままでは、30年先、50年先には、日本の工場は今の1/3、下手をすれば1/5にさえ減ってしまっているかも……。
日本の職人の丁寧な手仕事、伝統の技術、そういったものが失われてしまうことはどうしても避けたい。
“どんな人が、どんな想いで作ったものなのか?”——同社では、それを大切に、ものづくりの現場の職人さんとの信頼関係を大切に、ものづくりを行っています。
その姿勢があるからこそ、自信と誇りを持ってお客さまのもとに届けられる、「絹屋」ブランドをはじめとする最高品質の商品ができていくのです。
大醐の商品のこだわりは、天然素材のシルクをはじめとしたお肌に優しい素材。それは、より多くの方にご利用いただきたいという願いから。お肌に優しい天然繊維、環境に優しい素材を用いて、人にも環境にも優しい製品づくりを目指す。そして、衰退しつつある日本のものづくりの技術も守っていく……。
たくさんの想いが詰まった「絹屋」のアイテムで、最上級の心地よさを味わってみてください。
ホットな心も一緒にお届けする、純国産タオル
「人の生活と共にあるタオルを通して、日常の中で心身共に豊かさを感じていただきたい」
これが、東京・青梅で創業して150年以上。50年以上の長きにわたってタオルを作り続けてきたホットマン株式会社の想いです。
1秒タオルをはじめとする吸水性抜群の上質なタオルが脚光を浴びる同社ですが、創業はなんと明治元年(1868年)。当時は絹織物製造業を営んでいました。そこで培われた、細い糸を密度濃く丁寧に織り上げる高度な技術と、秩父山系の伏流水を豊富に使った染色技術は、時代が令和となった現在まで受け継がれ、タオルづくりに活かされています。
同社がタオル製造を始めたのは今から50年以上前。以来、「お客さまの快適で心豊かな生活に貢献する」という理念に基づき、すべての生産工程を自社で行える一貫生産、そして販売までも自社で行う製販一貫という、他に類を見ない独自の仕組みを作り上げてきました。
社名のホットマンの由来は、
「タオルの持つぬくもり、つくり手としての熱い気持ち、そしてお客様を想う温かい心」。
・高い品質を追求しながら、すべての工程に関わり責任を持つ
・自らの手で、お客さまに商品とともに安心と信頼をお届けする
という想いがそこにはあります。
同社はまた、SDGsにも力を入れています。
・必要な時に必要なモノをつくる製販一貫体制
・薬剤に頼らない環境と人に配慮した独自製法
・永く心地よく使える品質とその文化の啓蒙
・可燃ゴミを固形燃料化して再利用
・ボイラー燃料の切り替えによるCO2削減
・1秒タオルの開発等の高付加価値製品の製造
これらのために、地元・青梅の小学校での出前授業や職場見学の受け入れなども積極的に行っています。
伝統ある会社の革新的な取り組みの数々に、これからも目が離せません。