セラピスト6月号第2特集「私の“こだわり”オーガニック」連動企画
画期的な有機農業【BLOF農法】とは?
そしてオーガニックの未来とは? 

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『セラピスト』6月号の第2特集、私の“こだわり”オーガニックでは、コスメとフードにスポットを当て、オーガニックの最前線で活動する人たちの声を紹介しました。

人の身体だけでなく心にも安心・安全を届けるオーガニックは、地球環境にも、すべての生命にも優しい、愛のある選択肢。人を癒すことを生業とするセラピストにこそ、ぜひ取り入れていただきたいライフスタイルです。

本稿では、誌面では紹介しきれなかった多収穫、高栄養で美味しく丈夫な作物が育つという画期的なオーガニック・BLOF農法について、4月1日に長野県・原村で開催されたイベント「宮崎ますみさんと学ぶ有機栽培」のレポートを交えつつお伝えしていきます。

取材・文◎本誌編集部

当日のプログラム

講演① 宮崎ますみ
自分たちが食べるものを出来るだけ自分たちの手で作りたい〜八ヶ岳の麓から始まる自然の奇跡と癒し

講演② 小祝政明
農業の常識を変え、作物本来の力を引き出す。失われた森林を取り戻し、持続可能な未来を想像するBLOF理論

講演③ 西田聖
生態系の調和を保つ米づくりを目指して・日本の米作りを変えるBLOF理論

講演④ 三澤明久
生育の法則がわかるからおもしろい/初めての家庭菜園・ベランダ菜園でもすごい有機野菜が穫れる!

トークセッション

講演① 「農福連携」も視野に、希望を持って農業をやっていきたい

講演のトップバッターは宮崎ますみさん。

まずは女優からヒプノセラピストへの転身、さらには原村で農業を始めるまでの経緯について語ります。
『セラピスト』4月号の巻頭特別企画記事もぜひご覧ください!)

魂の探求をしながら生きていく中で、宮崎さんは乳がんを患い、食事療法によって健康を取り戻しました。

そしてヒプノセラピストとしての活動をする中、内からの声に従い2020年に原村へ移住。農業を始めました。

今後は「農福連携」もやっていきたいと話す宮崎さん。一緒に農業をやっているメンバーも飛び入りで体験談を語ります。

知的障がいがあり、作業所にも通えなかった女の子が、農業ならば、のびのびと楽しそうに参加できたとのこと。

畑や自然が人を癒すということは、本誌の取材の中で、豊受自然農の由井寅子さんも話していました。また、「農福連携」は、落合恵子さんも口にしていたワードです。

「BLOF理論でなぜ、収穫量も増え、品質も上がり、甘く美味しい、さらに病気や害虫にも強い作物が作れるのか?をお伝えしたいです。食料の問題に関しては、ものすごく危機感があるのですが、そんな中でも希望を持ってやっていきたいです」

そう言って、宮崎さんは講演を締めくくりました。

講演② BLOFは自然の中に元々あった理論

演者の2人目は、BLOF理論の提唱者であり、株式会社ジャパンバイオファーム代表取締役の小祝政明さん。

実は小祝さんのお祖父さまは、戦後に日本で初めて苗代を開発した人。そんな祖父のもと、小祝さんも小学校低学年から農作業を手伝っていました。

しかしながら、そのまま農業の道に進んだわけではありませんでした。

英語教師を目指して英文学部に進学するも教職を断念し、小祝さんは得意な機械いじりを活かしてHONDAの開発ライダーとなります。しかし、怪我によってレースの道も絶たれてしまいました。

当時、レースの世界の過酷な日々と乱れた食生活で20代にして肝臓を患っていた小祝さんですが、マクロビオティックとの出合いにより健康を取り戻します。
リマ・クッキングスクールに通っていたときには、女性の中に一人混じってフライパンを振っていたとか。

そして「本当に良い食べ物を作らなくては!」と決意し、まずは屋久島から青森まで全国各地の有機農業生産者のところを手伝いながら数カ月ずつわたり歩くという修業の旅に出ます。
うまくいっている有機農家も、残念ながらそうではないところも見てきた小祝さん。それらの気づきをまとめるようなかたちで、20代後半で新規就農を果たします。

有機農業で稲と野菜と果物を育て、年々、成果を上げていった小祝さんですが、あるときオーストラリアから農業指導の依頼が舞い込みます。
渡豪中にも有機農業を実践しつつ、さまざまなことを試した小祝さん。

そして、帰国後にまとめたのがBLOF理論でした。

「残念ながら、僕はBLOF理論を作ったわけじゃないんですね。作ったり発見したりしたのではなく気づいただけ。自然界にそもそもあった理論がBLOFで、単に土づくりの正しい順序がわかっただけなのです。BLOFとは、Bio Logical Farming。生態系調和型栽培理論です。生きているものが本来持っている生態に合わせることで、野菜の栄養価も高まり、気候の変動や病害虫にも強い野菜が育つのです」

そのヒントになったのは、60年前の、農薬も化学肥料も使わない元々の日本の農業だったと小祝さん。自然界の法則に則っていくことの大切さを教えてくれました。

講演③ BLOFで農薬や化学肥料がいらない理由

3人目の講演者はJA東とくしまのカリスマ営農指導員・西田聖さんです。

西田さんは、ご自身の日々の取り組みから、農薬や化学肥料に頼らず、しかも高品質な米を作る方法について話しました。

そもそも、ネオニコチノイド系の農薬をどうして使用するかというと、カメムシの害から稲を守るためです。
カメムシがお米から吸汁すると着色粒ができてしまいます。
着色粒が混ざった米は等級が1ランク下がり、そうすると当然価格も下がり、農家の収入はダイレクトに下がってしまいます。
それを防ぐため、多くの農家では育苗箱に殺虫剤であるネオニコチノイドを散布し、それを田植えしているとか。

ネオニコチノイドは、生物の脱皮を阻害します。脱皮ができないということは、例えばその水田で育ったヤゴはトンボになれず、永久に死滅してしまいます。現に今、日本各地でアキアカネが激減しているとのこと……。

一方で、BLOFで育てた稲は、セルロースが多くなり、折り曲げようとするとバキッと音を立てて割れるほど硬いのです。
カメムシが針を刺すこともできない丈夫な稲となり、虫害を免れるのだそうです。

そして、丈夫な稲や野菜が育つ理由は、根にありました。

BLOF理論で育てると、作物の根は白くなります。
これは土壌から養分や水分をたくさん吸える状態。逆に、一般的な作物の根の色は赤みを帯びていて、これは人に例えるならばマスクをして水を飲んでいるような状態なのだそう。

BLOF理論で白い根にするために土壌を改良することで、こうして農薬や化学肥料を使わずに1等米の比率が高い米作りを実現できるのだと教えてくれました。

なお、虫のほかに雑草も農業の大敵ですが、こちらに関しても、BLOF理論を使って段階的に除草剤の使用を減らし、最終的には除草剤ゼロにする方法、あるいは最初から除草剤ゼロにする方法もあるとのことでした。

講演④ 素人でも大成功できるBLOFによる家庭菜園

講演のトリを飾るのは、つい先日『BLOF理論で有機菜園 初めてでもうまくいくしくみ』を上梓したばかりの三澤明久さんです。

小祝さんの会社・ジャパンバイオファームの家庭菜園部門担当者でもある三澤さん。ご自身も全くの素人から家庭菜園に挑戦し、成果を上げています。

「家庭菜園の5大悩みは、①病気になる、②虫が付く、③甘くない、④美味しくない、⑤収穫量が少ない だと思います。これらを丸っと解決して、しかもど素人でも成功できるのがBLOFの野菜作りなのです」と、参加者の心をつかみます。

BLOF理論に則った家庭菜園では、防虫ネットなし、化学肥料ナシで元気でおいしい野菜を、それもマンションの狭いベランダなど、限られたスペースでも作ることができるといいます。

その秘訣は、BLOFによる土作り。

通常3〜5年ほどはかかるとされる有機の土作りですが、BLOFで提唱する太陽熱養生処理を行えば、わずか3、4週間でふかふかの土が完成するとのこと。それも、たとえばプランターの土を復活させるくらいならば、市販の透明のゴミ袋を使って、小学生でもできるというのです。

「BLOF理論で、ぜひ野菜の本来の美味しさを楽しんでください!」という言葉に、受講生一同、大きく頷いていました。

トークセッション 人も、自然の循環の中へ……

イベントの最後はトークセッション。

宮崎さんは、米国ではスーパーに行けば有機のものが普通に選択肢としてあったのに対し、日本に帰国してみて、それがほとんど無に等しい状態だったことに驚愕したこと、さらに日本でしかお目にかかれないような安全性に疑問のある添加物も多いという、日本の食事情について話してくれました。

「食について知れば知るほど、悲しくなるくらいの日本の現状です。そして、本来の人間の在り方から逸れることで病気になるのです。畑に入ると健康になります。自然の循環の中に入っていく生き方をしていければと思います」

それを受けて小祝さんも、
「仕組みがわからなくても人は生きていけるし、仕組みがわからなくても植物はどうにか育ちます。でも、不自然だとどこかに不具合が出てきて、それを修正することで、人も植物も健康になります。『BLOF的生き方』についても考えてみてください」と続けます。

さらに、収穫するということは畑から持ち出すこと。作物で持ち出した分を堆肥などで畑に戻す、循環型にしていくのが本来の姿で、人間の社会を本来あるべき循環型のものに戻していきたい。
そしてそれが有機農業の役割なのだと、その言葉に力が込もりました。

『セラピスト』本誌の特集でも、取材にご協力いただいた皆さんは異口同音に、1人ひとりの消費者が知識を身につけ、賢くなることの重要性を語っていました。

目先の安さや便利さに目を奪われてしまうことももちろんあるでしょう。ですが、“気づいたところから”“無理なくできる範囲で”のオーガニック生活を始めてみることが、地球を未来へ繋いでいく第1歩になるのではないでしょうか。

そして、どうせやるなら楽しく! 美味しく!

プランターを1つ用意して、BLOF理論で好きな野菜を1種類育ててみる……そんなところからのスタートでも良いのかもしれません。

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