第2回
「精油の選び方」
これまでアロマセラピストとして、アロマスクール、マッサージケア、香育など様々な活動の中で、6,000を超えるアロマ調香を行ってきた、一般社団法人プラスアロマ協会代表理事の齋藤智子さん。
特にこだわってきた「アロマ調香」、香りのブレンディングについての連載が、セラピスト2019年8月号よりスタートしました。誌面では全6回の連載を通じて、アロマ調香スタイリスト講座・デザイナー講座でお伝えしている「精油の選び方」「精油の組み合わせ方」「空間理解・空間認知」「コンセプトの可視化」「機能性とアート性」「道具の選定」といったエッセンスをご紹介していきます。
10月号本誌ではご紹介できなかった精油の嗅ぎ分けと選び方の事例をウェブにてお届けします。また、毎回のテーマに即した動画を、期間限定で公開いたします。
文◎齋藤智子(一般社団法人プラスアロマ協会代表理事)
蒸留所で精油の香りを嗅いでいるところ
精油ラベルの文字情報を確認する
精油の選び方は、まず瓶のラベルを確認します。精油の名称は各メーカーによって異なりますので、名前だけでなく学名表記もしっかりチェックしましょう。ラベル表記の部分で私が特に注意をして確認をするところを、ラベンダーを例にして、いくつかお伝えします。
すべて真正ラベンダーの精油
1. 植物の種類
名称:真正ラベンダー(メーカーにより表記が異なる場合あり) 学名:Lavandula angustifolia 学名は世界共通のため、海外で現地の植物名表記が分からなくても、精油を見つけられ、新しい発見があるでしょう。
2. 産地(原産国)
同じラベンダー精油でも産地やメーカーによって値段に違いがあります。一般的に海外では広い農場で大量生産を行うため、かなり安く生産できることが多いです。また、産地(原産国)によって人件費や流通経費が違うのも理由の1つです。
3. 抽出部位
ラベンダーの場合、一般的には花から精油を抽出しますが、葉や茎にも精油成分は含まれているので、全草を蒸留釜に入れたくさんの量を取り出す場合もあります。花は香りが甘く濃い香りですが、茎や葉には渋みがあるため、このブレンド比率と抽出方法によって精油の香りも変化します。同じ種類のラベンダーでも、メーカーごとに違う値段や違う香りになるのはこのためです。
4. オーガニック表記など
現在の日本では、多数のメーカー、ブランドの精油が手に入り、「オーガニック・最高品質」などの文言を目にすることがあります。しかし世界各国で「オーガニック」の認定機関も基準も多岐にわたるため、その文言だけでは、名実ともに良質な精油なのかを判断するのが難しい時代になってきました。そこで大切になってくるのは、自分の目や鼻を鍛えて経験値を上げることと、自分で作った「香りの辞書」です。
さまざまな認定マーク
自分の「香りの辞書」を増やす方法
嗅ぎ分けを行う際に行うと良いポイントは、1つひとつの精油を嗅いだあとに、その香りの印象や、想起されるものを文字だけでなく、色や形など可能な限り多くの表現で書き出し「精油のプロフィール」を作ることです。
<「精油のプロフィール」への記入カテゴリー例 >
- 色(黄色、淡い水色、限りなく黒に近い紺、など)
- 温度(あたたかい、涼しい、冷たい、など)
- 硬度(硬い、やわらかい、など)
- 季節感(初夏、冬至、など)
- 地域性(東京、海辺、南国(バリ島なのか、ハワイなのかも)など)
- 対象(子どもにおすすめ、男女問わず、など)
- キーワード(女性の多い職場、ラグジュアリー、集中、など)
自分だけの情報を増やした「香りの辞書」には、第3回で詳しくご説明する「精油の組み合わせ」、どの精油との相性が良いなど、アロマブレンドの経験も付け加えていきます。
イメージを言葉や色、図表などに変換する表現力は、磨けば磨くほど洗練されていきます。実際に使った体験をいかに自分の中に落とし込み、整理して言葉にするか。逆にそこがないと、お客様に納得していただく香り作りが難しいのではないか、というほど、私自身が大切に考えている部分です。「香りの辞書」が増えてくると、自分自身の香りへの自信や、お客様への説得力が増してきます。ぜひ皆さんも、「精油のプロフィール」を作って、自分の「香りの辞書」を増やしていってください。
(一社)プラスアロマ協会ではこの秋より、TOMOKO SAITOセレクトの精油セットの販売もスタートしました。これまで使ってきた様々なメーカー、蒸留所、香りの違いなどのこだわりから、信頼おける生産者であること、また各種認定などの評価(GMP認定、フェアトレード認定、フランス政府からのexcellent評価など)調香の組み立てやすさ、使いやすい価格帯など、様々な角度からみて選んだ精油のセットです。
- TOMOKO SAITOセレクト精油セット
- TOMOKO SAITOセレクト和精油セット
アロマ調香のために精油選びにこだわり、辿り着いたひとつのポイントとして、わたしたちのアロマ調香スタイリスト講座では、「100本の精油の嗅ぎ分け」をキャッチフレーズにして、受講生には100本以上の精油を嗅いでいただいています。
アロマ調香デザイナー講座卒業生へのインタビュー
アロマ調香スタイリスト講座、アロマ調香デザイナー講座を実際に受講した卒業生の声をお届けします。
- 中地絵美さん
(IAPA認定アロマ調香デザイナー・公認トレーナー、仙台) - 蓑 栄理さん
(IAPA認定アロマ調香デザイナー・公認トレーナー、飛騨高山)
Q1. アロマ調香デザインを学んで良かった点、気づきはありましたか?
中地絵美さん(以下、中地さん)
講座受講後は、自分の鼻での経験を生かしつつ、産地やメーカーなどの情報を含め、精油の選び方と楽しみ方が広がりました。また、もともと行っていた香水(調香)レッスンでも、使う精油の幅が広がりました。講座全体を通して、香り創りに関する発見だけなく、実技を通しての自信もつけることができました。
蓑栄理さん(以下、蓑さん)
今までは、認定マークに頼って選んでいましたが、同じ種類の精油でもメーカーによってこんなにも香りが違うと知って驚きました。自分の鼻で嗅いで確かめてみることが大切だということと、作りたい香りによって精油を選び分けることも大切だと学ぶことができました。
Q2. アロマ調香デザイン講座の受講後に、ご自身の活動やスクールなどでどのように活かされていますか?
中地さん
IAPAのメソッドに基づいた「パーソナルアロマブレンド」のメニューが増えました。さらに他のスクールにはないアロマ調香の養成講座も提供できるようになりました。空間デザインのお仕事としては、企業のエントランスや応接室の香り、エステサロンでのアロマ空間演出をさせていただいています。また、プラスアロマ協会のパートナー制度である「アロマ調香Lab.」により、香りを楽しみたい新しい方との接点ができ、仕事の幅が広がりました。
箕さん
講座受講後にカフェのアロマデザインをご依頼頂きました。二十四節気を取り入れて毎月テーマを決めて空間演出をし、カフェで提供するおしぼりの香りもお創りしています。また飛騨のママの情報サイト「Hida mommy」で、アロマ調香デザイナーとしてアロマに関する年間コラムを執筆させていただくようになりました。「アロマ調香Lab.」では、お客様との出会いが広がり、新しいサービスが提供できるようになり、仕事としてとてもやりがいを感じています。
今月のアロマ空間演出レシピ
HYGGE(ヒュッゲ)を感じるアロマレシピ
くつろぎ、穏やかさ、充実感、優しさ、リラックス
レシピ
・オレンジスイート 25%
・マンダリン 15%
・ユズ 10%
・レモンマートル 5%
・ローレル 5%
・ラベンダー 10%
・ヒノキ 15%
・サンダルウッド 10%
・パチュリ 5%
Profile
齋藤智子さん
さいとう・ともこ アロマ調香デザイナー®。一般社団法人プラスアロマ協会代表理事。京都で十代続く家に生まれ、伝統的な香り文化に親しむ。一部上場企業勤務を経て、アロマの世界に入り、6,000種類以上のブレンドを制作。調香のプロを育成する傍ら、企業の香りブランディングやメディア掲載も多数。アロマブレンドの第一人者。
“HYGGE”(ヒュッゲ)とは、デンマーク人がとても大切にしている、時間の過ごし方や心の持ち方を表す言葉です。ほっとくつろげる心地よい時間と、そこから生まれる幸福感をイメージしてみてください。今回は秋に向かって、包み込むような優しさを香りで表現しました。柑橘類とローレルの甘さをうまく使うことがブレンドのポイントです。