第5回
アロマ空間演出の「プロセス」「空間づくり」に必要なものとは?
これまでアロマセラピストとして、アロマスクール、マッサージケア、香育など様々な活動の中で、6,000を超えるアロマ調香を行ってきた、一般社団法人プラスアロマ協会代表理事の齋藤智子さん。 なかでも特にこだわってきた「アロマ調香」と「香りのブレンディング」について、「セラピスト誌」で連載しています。
今回は、アロマ空間演出の「プロセス」と「空間づくり」の際に必要な要素について、解説します。
文◎齋藤智子(一般社団法人プラスアロマ協会代表理事)
10年で大きく変化した「アロマ空間演出」への理解と認知度
今回はアロマ空間演出のプロセスと、空間づくりを考えるときに必要な様々な要素を確認していきたいと思います。
これまで大小100件ほどのアロマ空間デザイン、アロマ空間演出を行ってきましたが、その空間に対する認識や反応は10年前とは驚くほど違ってきています。
当時は個人で「アロマ空間デザインをやります」と言っても、いくつものハードルがありました。
まず、「香り、匂い」に対して、嫌いな人が多いという概念が多くありました。「アロマ=癒し」とは言われてきましたが、それでも「香りを噴霧する」「匂いがする空間」には「嫌いな人がいたら来なくなってしまう」と言われて、話を聞いていただけないこともしばしばありました。
もちろん、興味をもってお問い合わせをしてくださる方もいましたが、今と比べるととても少なかった印象です。
次に問題になるのはディフューザーの準備です。業務用の大型ディフューザーは非常に高価です。それをどうやって準備するのか。
私が最初に取り組んだ事例は、地元の歯科医院でした。その場所では、40畳ほどの広さに対応できるディフューザーであれば間に合います。まずはそのような規模から、香りがどんな風に広がるのか、空気に乗って流れるのか、またそこに滞在するお客様の反応もお伺いしながら経験を積んでいきました。
小さなサイズの空間から、経験を積むことで次のアイデアも生まれてきます。まずはご自宅やサロンからはじめてみてみませんか。
アロマ空間演出をする上で、「ペルソナ」の分析は重要!
では、アロマ空間演出のご依頼をいただいた場合、どんなことをする必要があるのかお伝えしたいと思います。
お問い合わせから納品までの大まかな流れをご紹介します。
まず必ず確認するのは、「空間認識」と「ペルソナの設定」です。 これは個人の香り、小さいスペースの香り、また大規模なイベントなどでも同じことを行います。
アロマ空間演出のご依頼をいただいているその場所が、
・どういう場所なのか
・どんな目的を持つのか
・どのくらいの広さなのか、オープンエリアかクローズドエリアか
・どんな雰囲気でどのようなインテリアに囲まれているのか
といった様々な角度から考える必要があると前回お話ししましたが、この他に重要なのが「ペルソナ」の分析です。
「ペルソナ」(persona)とは、直訳すると「人格」という意味です。その場所や商品、サービスを利用する顧客のことを表します。
つまり、その空間に「どんな人がいるか」、というのは非常に重要です。
ちなみに、ペルソナと同じような意味で「ターゲット」という言葉が使われることも多くありますが、ペルソナはターゲットより、一層人物像をはっきり、具体的にイメージして考えていきます。
例
■ターゲット
50代 会社役員 男性
■ペルソナ
名前:大木 太郎
年齢:42歳
職業:会社員(営業職)
性別:男性
住所:東京都
家族構成:専業主婦の妻、中学1年女子、小学校3年生女子
このように、性別、職業、年代、のような大まかな設定ではなく、より具体的に細かく人物像を絞り込んでいきます。ペルソナを設定することで、その他の多くのお客様が求めるものを提供することにつながるため、この考え方を実践しています。
そしてそれらの情報から、空間演出に対するコンセプトをシートにまとめていきます。ちなみに個人サロンに向けたコンセプトシートも、法人企業に向けたコンセプトシートも、基本的に確認をする点はおおよそ同じ内容になります。
また、香りを使用する広さや時間によって、ディフューザーの選定も変わってきます。
つまりここで「空間」について再度確認することになります。
対象となる空間の広さ、高さ、空調、ドアや窓の開閉、そして人の流れ。もともとその空間が持っている匂いもあります(新築の場合は資材の匂いがあるので確認しましょう)。
このように、アロマ空間デザインを考える上で大切なのは、これら空間の諸条件と、クライアントの目的・意向に合わせた香り作りの両軸から、1つ1つ確認をしていく作業なのです。
私たちアロマ調香デザイナーは、「いい香りを作る」ということは当然のことながら、それを満たすためにさらに何が必要なのかを常に考えていく必要があります。
精油の素材、組み立て方のルール、香りの表現力という、目に見えないアロマだからこそ、丁寧にやっていくことが大切だと考えています。
またこれを考えることが出来ると、ここ数年どんどん増えてきているアロマ調香やアロマブレンドという仕事の分野での差別化にも繋がるはずです。
私たち一般社団法人プラスアロマ協会の「アロマ調香スタイリスト講座」「アロマ調香デザイナー講座」では、1つ1つの香りを嗅ぎ比べるところから、じっくり実践的に学んでいただきます。
初めての方から、国際資格を持つセラピストの方まで、アロマ空間演出の世界に魅力を感じて、興味を持って全国、また海外から学びに来てくださっています。
まだまだこれから伸びていくと予想される分野の「アロマ調香デザイン」。
ぜひお気軽にお問い合わせください。
今回のテーマの核である「ペルソナと香りの評価分析」について、動画でさらに詳しく解説します。
今月のアロマ空間デザインレシピ
START
春、深呼吸、リフレッシュ、安心感
レシピ
・レモン 10%
・ベルガモット 20%
・オレンジスイート 15%
・ユーカリグロブルス 10%
・パルマローザ 10%
・ヒノキ 15%
・ラベンダー 5%
・フランキンセンス 10%
・サンダルウッド 5%
Profile
齋藤智子さん
さいとう・ともこ アロマ調香デザイナー®。一般社団法人プラスアロマ協会代表理事。京都で十代続く家に生まれ、伝統的な香り文化に親しむ。一部上場企業勤務を経て、アロマの世界に入り、6,000種類以上のブレンドを制作。調香のプロを育成する傍ら、企業の香りブランディングやメディア掲載も多数。アロマブレンドの第一人者。
春といえば、新しい環境、新しい友達、新しい習い事など様々なスタートの時期。わくわく嬉しい反面、少し緊張したり不安があったり……そんな思いもよくあることです。そんなときに、深い呼吸とともに勇気付けてくれるような香りです。