長年のアーユルヴェーダ実践と普及の功績を認められ、本場スリランカKIU大学に学科長として招聘された、田畑優美子さん。自身を不調から救ってくれたアーユルヴェーダ、そしてシロダーラの魅力に引き込まれ、心技の発展に尽力してきました。
スリランカでは、伝統医療であるアーユルヴェーダは、未病ケアから治療まで、幅広くウェルネスをサポートしています。その根幹にある理論が、体質を表す「ドーシャ」、そしてドーシャにも対応する理想的な1日の過ごし方「ディナチャリア」です。アーユルヴェーダの軸となるこの2つの理論について、そして体質別にお勧めの過ごし方を田畑さんが解説します。
文:アーユルヴェーダヘルスケア学院 代表理事 田畑優美子
ご存知ですか?
健康的な1日の過ごし方「ディナチャリア」
アーユルヴェーダは約5000年の歴史がある伝承療法です。病気になってからの治療だけでなく、病気にならないための予防療法として、WHO(世界保健機関)でも高く評価されています。
そのアーユルヴェーダの予防療法として「ディナチャリア」を推奨しています。ディナ=日、チャリア=行動という意味があり、分かりやすく伝えるなら、「健康的な1日の過ごし方」と言えるでしょう。アーユルヴェーダではドクターが診療に活用する体質診断=ドーシャチェックがあります。体質は大きく3つに分けることができ、その方の体質に合った治療法や健康法を用います。
アーユルヴェーダでは、宇宙のリズム、自然の流れ、そしてその人の体質に合った健康法を大切にすることが、健康へとつながると考えています。セラピストにとっても、お客さまの健康管理と同様に、ご自身の健康管理にも活用できるのがディナチャリアです。
基本のディナチャリア
まずは、基本的なディナチャリアを紹介します。アーユルヴェーダでは、特に朝の活動を重視しています。
<朝>
・朝の起床はブラフマムフールタの時間を推奨(日の出の96分前)
・舌磨き、歯磨き
・白湯を飲む
・運動
・入浴
・オイルマッサージ
<日中>
・自身のアグニ(消化の力)を確認し、昼食をしっかり摂る
<夜>
・18時~22時までに就寝
・夕食は睡眠時にお腹に残らないように摂る
これらの基本的なディナチャリアを意識するだけでも、健康的な生活へと近づきますが、人によっては夜勤などの理由で、この時間通りにできない方もいるでしょう。
アーユルヴェーダで大切にしていることは、リズムです。ルール通りにやらないといけないと考えるとストレスにもなってしまいます。ご自身のリズムで、できる所から、1つでも取り入れてみましょう。
次に、ご自身の体質に合わせたディナチャリアをご紹介します。
ドーシャごとにお勧めしたい「ディナチャリア」
体質確認=ドーシャチェックの考えは、「パンチャマハブータ」という5つの元素をベースにしています。5つの元素とは「空」「風」「火」「水」「地」で、それぞれの組み合わせにより、ヴァータ、ピッタ、カパ、の3つの体質(=ドーシャ)に分けられます。
自分のドーシャに、どのような1日の過ごし方が適しているか見ていきましょう。
「ヴァータ」にお勧めのディナチャリアは?
ヴァータ体質は空・風の元素を持つ方々で、軽い元素であることから、よく動き、反応も俊敏で感性豊かな方が多く、じっとしているよりも活発に活動しています。まずは、健やかに活動するために、体力保持に欠かせない睡眠を大切にしましょう。
❶早起きするための「早寝」
理想の睡眠時間は8時間です。8時間、まとめて取れない時は、少々の“お昼寝”もヴァータ体質の方にはお勧めです。
❷朝の入浴とオイルマッサージ
ヴァータが健康的な1日のスタートを切るのにお勧めです。冷えやすい体質のため、朝の入浴は1日の活力を支えます。入浴やオイルマッサージに、癒し系のアロマを併用すると良いでしょう。
ラベンターやゼラニウムなど、リラックス効果の高いアロマを使用することで、ヴァータの過剰な行動力を緩やかにしてくれます。
❸睡眠の質を高め、滋養を与える
活発に活動した身体に滋養を与えるために、入眠前には温めたゴールデンミルクを飲みましょう。ゴールデンミルクは、温めたミルクに、ターメリック、ハチミツを入れたもので、心地良い甘さが良い睡眠を与えてくれます。アメリカのセレブの間でも人気になったミルクです。
「ピッタ」にお勧めのディナチャリアは?
次に、ピッタ体質の方の健康的な過ごし方をご紹介しましょう。ピッタは火と水の元素を持ち、主に、火の元素が影響します。火は文字通り熱いイメージであるため、ピッタは熱血漢で、真面目に責任感を持って仕事に励み、気がつけばリーダーシップを発揮するタイプです。そのため、責任感や目標意識が高く、同時にストレスも抱えやすいといえるでしょう。また、ピッタは胃腸など、消化器系に問題を抱えやすい傾向にあり、食事にも注意が必要です。
そのようなピッタにお勧めなのが瞑想です。
❶瞑想時には白檀のお香&ナディショーダナ
朝や夜の瞑想時には、白檀のお香を使用しましょう。また、ナディショーダナ(片鼻呼吸)を取り入れることで、交感神経と副交感神経のバランスを整えてくれます。
❷朝の入浴は軽めに
朝の入浴は、長湯を避け、軽めのシャワーでもOKです。
❸サンダルウッドオイルでマッサージ
朝晩のオイルマッサージは、サンダルウッド(白檀)などの鎮静系の香りがお勧めです。
❹昼食は控え目に
過食になりすぎないように注意。1日のうちでは、昼食がメインの食事となります。刺激物は避けて、辛味、塩味、酸味の味付けは控えめにし、適度な甘みや、苦みをもつ野菜であるゴーヤやほうれん草などは積極的に摂りましょう。
「カパ」にお勧めのディナチャリアは?
最後に、カパ(カファ)の体質は地と水、とくには水の元素を重視します。
水の性質上、重たさや、冷たさを感じます。停滞すると澱み、流れると良いものになる水をイメージして、停滞させないように、代謝を上げていくことが大切です。
カパ体質の人は、大きな大地、大きな海のようなゆったりとした包容力のある、癒し系の人たちが多く、愛情も豊かで、セラピストに多いタイプかもしれません。活発に動くというよりも、じっくり観察し、よく考えて、自分が納得する答えを見つけてから動くタイプが多いでしょう。
そんなカパにお勧めのディナチャリアは、代謝を上げることを目標にしましょう。
❶朝の舌磨き
舌磨きはカパにとっては大切な健康チェックです。身体にアーマ(未消化物)が溜まりやすいので、毎朝の舌磨きで確認しましょう。舌に舌苔が多く付いていたり、白や黄色の色があるときはアーマが過剰になっているサインです。
❷白湯をしっかり飲もう
白湯には身体のアーマを優しく浄化してくれる作用があります。特にアーマが過剰な時は、白湯に1つまみの岩塩とターメリックを入れて、浄化の力を高めましょう。
❸朝の運動には、ヨガや呼吸法を
腹式呼吸で代謝を高めつつ、硬くなりがちな身体をヨガやストレッチでほぐしましょう。
❹スゥエダナ&ミントウォーター
発汗療法もお勧めです。スゥエダナ(ハーブサウナ)はカパの代謝を高めて、動きやすい身体にしてくれます。スゥエダナが難しいときには、普通のサウナに入りながら、水にミントを入れた「ミントウォーター」の摂取がお勧めです。ミントは中枢神経に働きかけ、脳を活性化し、身体の熱も取ってくれるので、サウナのお供にお勧めのドリンクです。サウナがないときは、ハーブ温浴もお勧めです。ひましの葉やミントを浮かべて、ハーブの蒸気を吸いながら入浴しましょう。
このように、ディナチャリアは日々の生活の中で、出来ることが沢山あります。
ルール通りにやらなければならないと思うとストレスになるため、ご自身の生活が豊かになるために、出来ることから取り入れていきましょう。
著者プロフィール
田畑優美子
一般社団法人日本シロダーラ協会、アーユルヴェーダヘルスケア学院 代表理事。インドネシアアーユルヴェーダライセンス取得、アーユルヴェーダ学会セルフケアアドバイザー、スリランカKIU大学学科長、京都医健専門学校非常勤講師など、幅広い資格と肩書きを持ち、現役のセラピスト、講師、執筆、研究と多岐にわたり活動中。