お客さまを癒すために、自分自身が常に「健やか」であることが求められる、セラピストという職業。しかし、身体の疲労には気を配っていても、メンタルケアはおろそかになっている方は少なくないのではないでしょうか。
ストレスを受けた時、行動・身体・心のどこにひずみが表れるかは、人によって異なります。
身体が発するサインを的確に察知して、症状に合ったケアをしていきましょう。
構成◎松田さと子
疲労蓄積度チェック!
※5つ以上チェックがあれば、慢性疲労の状態です。
※1つ以上でも、チェックがついていると、心と身体は休息を求めています。
※当てはまる項目の改善のために、以下の対策を参考に、セルフケアを実践してみてください。
疲労傾向別ストレスケア法
身体のSOSの種類によって、セルフケアの内容は変わります。
上記の質問でチェックの付いた番号がある方は、下記の対処法を参考に、出来ることから実行してみましょう。
1番の項目にチェックが付いた人は
アロマバスで1日の疲れを取りましょう!
生活のリズムが崩れていませんか? 眠る直前まで仕事をしてしまうと、脳が活発に動き、脳の温度が上昇してしまいます。通常、眠っている間は脳の温度が下がり、明け方に最も低くなりますが、脳の温度が上がったままだと寝つきが悪く、疲れが取れにくくなってしまいます。対策としては、眠る前にぬるめのお風呂に入りリラックス。アロマバスで1日の自分の頑張りにご褒美をあげるのも良いですね。心地よい音楽を聴いたり、自律訓練法をしてみたり、軽くストレッチをするなどもおすすめです。
さらに、眠る前には、楽しいことや幸せな気分になれることを考えるようにしてみましょう。また、おなかがすいて目覚めてしまったときには、温かい牛乳を飲むと良いでしょう。いろいろと試したけれど深く眠れない時には、医師に相談し、自分の目的や体質に合う睡眠薬を処方してもらいましょう。
注:アルコールは、入眠導入は早いものの、短時間で目が覚めてしまい、よい睡眠が得られません。
2番の項目にチェックが付いた人は
睡眠時間を調整してレム睡眠時に目覚めるように!
朝の目覚めを良くしたい方は、90分の倍数で眠れるように目覚ましをセットしてみてください。レム睡眠の時に目覚めるとすっきり起きられるはずです。眠る前にアミノ酸のサプリメントを摂るとこともおすすめできます。それは、フェニールアラニンというアミノ酸が、メラトニンの原料になるためです。
3番の項目にチェックが付いた人は
脳細胞の成長を促す昼寝がオススメ!
昼間眠くなってしまうのは、脳が疲れたサインです。どうしても眠いときは無理をせず、15〜20分昼寝をしてみましょう。頭もすっきりしますし、昼寝中にも脳細胞の成長を促す物質が補われ、午後からの仕事がはかどるはずです。
4番、7番、12番の項目にチェックが付いた人は
リフレッシュのために何もしない1日を!
1日の疲れをその日のうちに解消することが出来れば理想的ですが、よく休んだにもかかわらず疲れがとれない場合、脳が疲れていることが考えられます。脳が正常に働くためにはセロトニン、ドーパミンなどの神経伝達物質が不可欠なのですが、日々脳を使いすぎていると消費が過多になり産生が間に合わないため、脳内の神経伝達物質が枯渇し、脳の働きが鈍くなってしまいます。その結果として、集中力が低下することがあります。
また、自律神経やホルモン、免疫などをコントロールする機能の中枢「視床下部」がダメージを受けるため、身体のだるさや頭痛、肩こり、冷え、月経不順、吹き出物などのさまざまな不調が起こってしまいます。
何もしなくても良い休日を作り、自然の豊かな場所に小旅行をしたり、アロマトリートメントやシロダーラ、リフレクソロジーなどでリフレッシュするのも良いでしょう。心地よいタッチングで、気持ちがよい、安心という刺激を与えられれば、海馬の脳細胞が新しく生まれ変わりますし、コルチゾールが減るのでストレスケアができます。
5番の項目にチェックが付いた人は
幸福感を感じる食卓作りのひと工夫!
口は、生まれてから初めて経験する快楽と安心の源です。大人になっても口に関連するものは、欲求や感情と少なからず結びついていることが多いものです。ストレスが多く食欲がでないときは、心が安らぐ食べ物を食べましょう。
美味しい食事は、ドーパミンを分泌する刺激となります。料理は五感をすべて刺激するので、できれば自分で作ってみましょう。お料理の盛り付けにこだわってみたり、花を飾ったり、キャンドルを灯したり、BGMを流すなど、幸福感を感じられるひと工夫も効果的。幸福感を感じられるはず。ついつい食べ過ぎてしまう時は、よく噛んで食べるようにしましょう。
7、11番の項目にチェックが付いた人は
エネルギーを増やすコエンザイムQ10を摂取しよう!
肩こりや冷えが気になる時、ストレス(*)がたまってイライラする時には、エネルギーを増やす働きを持つ「コエンザイムQ10」を油分を含む食事の後に60mg摂取しましょう。血流も良くなり、抗酸化作用もありますので、アンチエイジング対策にもなります。
*ストレスにさらされると、体内のコエンザイムQ10の量は減ってしまいます。
6、7、8番の項目にチェックが付いた人は
血流をよくするマッサージを習慣に!
背筋はピンと伸びていますか? 壁に後頭部、肩甲骨、おしり、かかとをつけたとき、この体の背面が一直線上にのった直立の姿勢が最も正しい姿勢です。デスクワークが多い場合、頭が前かがみになるため、その姿勢を保つために僧帽筋の過剰収縮が続きます。その結果、首の後ろや肩が凝ってきます。また、僧帽筋が収縮すると頭を覆う帽状腱膜が引っ張られ、筋収縮性頭痛を引き起こすことがあります。この場合、入浴の際に肩から頭頂部までの血行を改善し、筋肉をほぐすためにマッサージをすると効果的です。
また、首の前後には自律神経線維が走っているため、これが刺激されることにより、めまい、吐き気、眼精疲労が起きてきます。良い姿勢をキープできる座面が前傾になっている椅子を使用したり、枕選びの際、専門家にアドバイスを受けるのもおすすめです。入浴して血行を良くし筋疲労をとるために、まずは入浴して血行を改善させます。そして寝る前に縮んだ筋肉を伸ばすストレッチ体操をして血流を良くし、筋肉内にたまった乳酸を洗い流しましょう。アロママッサージも効果があります。良い姿勢を保つためには、筋肉も必要不可欠。筋力をつけるためにダンベル運動をしたり、アイソメトリック運動をするのも良いでしょう。
9番の項目にチェックが付いた人は
腸の具合を徹底チェック!
腸に炎症やポリープなどの器質的な病気がないかチェックしてみてください。腸に問題がない場合、過敏性腸症候群の可能性があるため、心療内科を受診されると良いでしょう。腸は心の鏡であり、ストレスで蠕動運動が活発になると下痢になり、弱くなると便秘になってしまいます。
13番の項目にチェックが付いた人は
居心地の良い環境を演出し、ポジティブなエネルギーを高めよう!
相手に飲み込まれないよう、少し踏ん張ってみましょう。まずは、考え方を柔軟に変えてみるところからはじめてみましょう。「こうあらねば」という思いは自分をがんじがらめにして気持ちをかたくし、更なるストレスを呼び込みかねません。
自己否定的な発言に気がついた時にはそこでストップ。プラス思考にスイッチを入れ替えてみて。ときには、自分はどうしたいのかしっかり主張しましょう。ポジティブなエネルギーを高めたいときは、自分の周りに居心地のよい空間を作りましょう。見ているだけでホッとやすらぐもの、使っていて幸せな気分になるもの、好きな香りや音楽など、少しでも多く取り込みましょう。自分を大切にすることで他人にも自然と優しくなれ、相手に対して「してあげる」「やってあげる」という気持ちが変化するはずです。
14番の項目にチェックが付いた人は
食事は大切なエネルギーの源。疎かにしないで!
食事のバランスが偏っていても、体を維持する栄養素はサプリメントで補っているから大丈夫!と考えていませんか? 食事をおろそかにしたり、朝食を抜いてしまったりすると影響を受けるのが脳です。なぜなら空腹になると脳はほとんど機能しないためです。
●朝食:脳は、一時間に5gのブドウ糖を消費しています。夜寝ている間も消費しているため、朝はブドウ糖不足の低血糖の状態になっています。おにぎり1個だけでも良いので、朝食抜きで仕事に行くことは避けましょう。その他、できれば消化のよいタンパク質(チーズ、卵など)もプラスしてください。
●昼食:血糖値の上昇率が高い食品(サンドイッチ、うどん、お菓子など)を食べると、ブドウ糖の吸収スピードが速くなり、インシュリンが過剰分泌されるため血糖値が下がりすぎてしまいます。昼食には、糖質の食品(パスタ、玄米など)を摂ることをおすすめします。
●夕食:食後3時間あけてから寝るのが理想的ですが、夕方からのセラピーのご予約を希望されるお客さまのために遅い夕食になってしまう日は、糖分の多い食事は、消化に時間がかかるため、控えましょう。
10番、13番、15番、16番、17番、18番、19番の項目にチェックが付いた人は
小さな目標を作り、1つひとつ着実にクリアしましょう!
ひとりで悩み事をかかえこんでいませんか? 心のケアで大切な最初のステップは、自分の心の声に耳を傾けることです。「今どう思っている? どんな気持ち? 辛くない?」と聞いてみましょう。誰にとっても負の気持ちを認識することは楽しいものではないため、つい「こんな気持ちになってはだめ」と自分を戒めたり、忘れようと無理におさえつけてしまうこともあるものです。しかし、気持ちを受け止めずにいると怒りがたまるようになったり、鬱状態を引き起こしてしまいます。自分の気持ちに気づいて受け止めて、それから行動する。この3ステップを実践してみてください。
辛い時は、一人で抱え込まないで、誰かに話を聞いてもらいましょう。悩みの内容によっては、親しい人だからこそ言えないこともあるもの。そんなときは、臨床心理士によるカウンセリングを受けることも効果的です。私たちは、ふだんは世間体や社会役割におされ無意識に防衛本能を使い、自分の本当の気持ちに膜を覆っていることがあります。カウンセリングでは、自分がどんな防衛本能を使っているのか、心の奥にあった気持ちや感情、思考パターン、記憶、願望などを探っていき、少しずつ意識上に引き上げることで弱っている部分に気づき、それを癒していくことができます。
また心の状況を受け止め、自分でコントロールする力がついてきますし、ストレスの受け止め方に変化が出てくるはずです。自分で解決の糸口を見つけたいときには、心理療法のひとつ「問題解決思考」の解決思考アプローチを勉強し、問題を整理してみるのもおすすめです。症状がひどいときには薬の併用が必要なこともあるため、心療内科か神経科を受診してみましょう。
目標に向かって頑張ってきたけれど、なかなか結果がでないためあきらめてしまい、その結果、やる気がでない、自信が持てなくなったという人は、目標達成に向かうために10段階のSTEPを作ってみましょう。いわゆる小さな目標です。1段1段、着実に進むことで、不安は和らぎ、自分の力を発揮することができるようになるはずです。
19番の項目にチェックが付いた人は
おしゃれで自分を演出してみませんか?
積極的におしゃれをすることで、気分を変えることができます。やる気を出すために赤い色をファッションに取り入れてみる、ピンク色の服を着て、幸せ気分を高める。憧れのメイクアップアーティストさんのサロンに行ってみる。ヘアスタイルを変えてみるなどがオススメです。きれいに変身したら、街を歩いてみてください。さっきまでの自分よりも視線はまっすぐ前を向いていて、颯爽と歩いてはいませんか? 急に誰かに連絡を取りたくなるかもしれません。
また、天気のいい日は外に出てウォーキングしてみたり、体を動かしてみましょう。ほのぼの気分にさせてくれるセロトニンを増やし、ストレスホルモンを減らすことができます。その日の気分にあった色の花を飾ることも効果的です。赤系の花を部屋のよく目に付く場所に飾ると、やる気が高まります。反対に心を落ち着かせたいときには、寒色系の花がおすすめです。
20番の項目にチェックが付いた人は
好きなことに熱中する時間を持ちましょう!
症状がひどい場合、早めに皮膚科を受診し、スキンケアを見直してみましょう。食生活、摂取している栄養に偏りがなかったかチェックし、改善していきましょう。好きなことに夢中になる時間を持ちましょう。お料理、ダンス、ピアノ、陶芸等、どんなことでもいいのです。さらに恋をするとエストロゲンが分泌され、艶やかな肌になります。