九州・沖縄の「全国和精油MAP」(セラピスト4月号連動記事)

投稿日:2018年3月12日

本誌連動の「全国和精油MAP」。最終回は、九州・沖縄編です。屋久島地杉や月桃など、本州の植物たちとはまた異なる魅力があるようです。また、同じ植物でも、蒸留法によって香りやトーンの違いが出てくるようです。作り方が分かる日本産精油だからこそ、味噌や醤油を蔵によってセレクトするような選び方が、今後増えていくのかもしれません。

構成◎本誌編集部

大分

久恒山林株式会社
六月八日
大分県中津市大字上宮永3番地1
TEL:0979-22-7944
info@rokugatsuyohkanomori.jp
http://rokugatsuyohka.jp
2010年よりヒノキ、スギ精油の水蒸気蒸留をスタート。2015年、新ブランド「六月八日」を開始。
大分耶馬溪(やばけい)産ヒノキ(木部、枝葉、葉)、大分耶馬溪産スギ(枝葉、葉)、大分耶馬溪産クロモジの枝葉。大分産夏ミカン(農薬不使用)、大分産カボス ( 農薬不使用)、大分産ローズゼラニウム(農薬不使用)
林業(森林整備)の会社のため、森林の保全、森林資源活用が持続可能な取り組みとなるような製造・販売プロセスを心がけています。使用した原料のトレーサビリティデータを公開し、原料の樹木の生育地、植林年、伐採時期などを閲覧可能にして、「適正に管理された森林から生まれたもの」であることが確認できるようにしています。また、「地域の活性化につながる」ことが事業目的の柱でもあるので、製造プロセスは大がかりな機械設備に頼らず、人手をかけてモノづくりを行うことを心がけています。森にいるような空気を感じていただくため、できるだけ原料の持つ本来の香りを引き出すことのできる原料の加工、管理を心がけ、常温常圧の水蒸気蒸留法を採用しています。
クロモジ(耶馬渓の山野に自生するケクロモジ。間伐が行き届いた明るい森に増えてきます)
芳香力も非常高く、華やかさと爽やかさを併せ持つ香りです。成分はGeraniol acetate, Tans-Geraniol, Linalool,1.8-Cineole がそのほとんどを占めます。お肌に有効な成分も多く含んでいるので、マッサージ、手作り化粧水などにもおすすめです。
日本の恵まれた四季の中で感じた香りであれば、リラックス効果も高く、心癒されると思います。樹木系の香りであれば、ヒノキの精油はヒノキ風呂に入った時の心満たされた時を思い出させたり、柑橘系であれば、オレンジやグレープフルーツより夏ミカン、カボスの香りが違和感なく受けとめられる香りなのではないでしょうか。ナチュラルライフを志向する方々にとって、精油が製造される背景もまた興味を持たれるポイントと思いますが、トレーサビリティがしっかり確認できるのも日本産ならではの魅力です。
ケクロモジ

 

鹿児島

株式会社やわら香
島の記憶(shima no kioku)
鹿児島県熊毛郡屋久島町楠川1471-5
TEL:0997-42-0109
info@yawaraca.jp
http://yawaraca.jp/
2012年8月からスタート(5年半)
屋久島地杉(幹)、(枝葉)、屋久島ポンカン(果皮)、屋久島タンカン(果皮)、薬ウコン精油(根茎)
「無垢の水」とも呼ばれる屋久島の天然水(純水に極めて近い超軟水)を用いて抽出。また、精油以外の副産物にも価値を見出し、” 循環するものづくり” を意識しています。例えば、釜に残る煮汁は「ディープウォーター」と名付け、草木染に活用するほか、化粧品原料としての可能性も研究中です。抽出後のウッドチップは、島内の生ごみを堆肥化するセンターに運び、生ごみの水分をほどよく抜くのに活かしています。
屋久杉地杉(幹)
和の香りを専門に扱うお取引き先の方の感想です。「どんな天候にも負けずに生きてきた植物のちからと、自然と共に生きるという生産者さんの想いはひとつの決意のような強さを感じる香りです。芯の通ったエネルギーを持つ香りが魅力です」。屋久島では樹齢千年以上の天然杉を「屋久杉」と呼ぶのに対し、戦後植林した人工林の杉を「地杉(じすぎ)」と呼びます。幹部分から抽出する精油は、本州の杉に比べ、安眠作用が15 ~ 20 倍ほど期待できる要素があります。
日本人のお客さまの声は、「安心感がある。(トレーサビリティ)」「西洋アロマが苦手でも日本産は受け入れられる(香りが強すぎない)」など。また、海外のお客さまからは、「木質系の香りはとてもミステリアス」「日本産であるということ自体のブランド力」という感想をいただいています。
屋久杉地杉(幹)

 

沖縄

日本月桃株式会社
日本月桃
沖縄県那覇市前島2-15-12
TEL:098-869-1222
info@gettou.co.jp
http://www.gettou.co.jp
1990からスタート(28年)
月桃(Alpinia zerumbet)の生葉、タイリン月桃(Alpinia zerumbet var.excelsa)の生葉
有機JAS に従って農薬、化学肥料を使わずに原料植物月桃を有機栽培。茎と葉を丁寧に切り分けて、茎を混合せずに新鮮な生葉だけを水蒸気蒸留しています。葉のフレッシュさと軽やかなトップノートを逃さず取り込むために、収穫の翌日には茎と葉を分離して水蒸気蒸留を完了させています。蒸留の際は、生葉を150kg 処理する蒸留釜(国内の蒸留釜としては大型の部類)を使い、安定した品質の精油を得やすくしています。蒸留時間は時間管理ではなく、副産物的に得られる蒸留水の量で管理。おおむね60ℓの蒸留水を得るまで時間をかけて水蒸気蒸留を行っています。冷却過程にこだわりがあり、常温の水とチラーを使った冷水により2工程を通して一気に冷却。これによりトップノートの成分の気化を抑制し、爽快な香気の精油を得ています。
シマ月桃
トップ〜ベースノートまでの香気成分を含むため、奥深く豊かな芳香を放ち、” 暖かさと郷愁を誘う懐かしさ” を感じる香り。リモネン、シネオール、カンフェン、カンファー、ピネン、リナロールなど、多彩な成分構成で、多種類の微量成分の集合体の精油。シネオールを含む精油との相性は良好で、香りの奥深さがさらに広がる。柑橘系精油とも相性が良く、マンダリンやプチグレンと一緒にブレンドすると、控えめな華やかさを感じる香気になります。
タイリン月桃
軽やかですっきりした香気。月桃精油と比較するとγ – テルピネン、テルピネン-4- オールの含有率が高く、ティートゥリーに近い香り。0.2%未満の微量成分はほとんど存在しません。
日本で作った精油を、日本で消費することは「地産地消」になります。柑橘や花の精油のように、酸化・劣化の早いものは、この点において日本産精油が有利です。月桃精油は酸化しにくいのですが、爽快感の源となるトップノートの軽やかな成分は揮発しやすいため、やはり地産地消が適します。また、消費者は、原料植物の栽培方法などの諸条件、抽出現場の環境や抽出方法について、確認ができ、一方、生産者は、安定した品質の安全な精油を確保できます。薬理作用を含めて、香りの特徴を活かした用途開発ができると、日本産精油は今後脚光を浴びるようになると思います。そのためにも、品質を担保する製造方法や表示方法、これらのルールなどを厳格に定めていくことが必要だと考えます。
シマ月桃

 

沖縄

ゆめじん有限会社
沖縄県国頭郡今帰仁村字兼次18-2
TEL:0120-48-7958
yumejin-info@yumejin.jp
https://www.yumejin.jp
2007年よりスタート
月桃、シークヮーサー
月桃は、自社の有機農園で栽培したものを葉の状態が良い時期に収穫・蒸留しています。シークヮーサーは地域近くの勝山シークヮーサーさんから原料を分けてもらい蒸留しています。精油を蒸留するときは、初留から後留を採るタイミングに気を使っています。
月桃
甘い中に清涼感のある香り。
生産者が近く、なじみのある香りも多いため、その土地土地に思いを馳せることができるものだと思います。
月桃

 

 

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