“香りでココロを変える!”をテーマにした、セラピスト10月号の「アロマの心理学」特集。
その中では、メンタルアロマのスペシャリスト対談として、「芳香心理療法」の松田さと子さんと、「アロマアナリーゼ」の藤原綾子さんにご登場いただきました。
この記事でご紹介するのは、対談中に話題となった、「人生が切り替わるときに、香りの好みも変わる」というフシギなハナシについて。心と香りの関係を掘り下げてきたお二人が、ご自身の人生において、どう香りと付き合ってきたのか。香りの変遷を紹介していきます。
取材・文◎山村浩子
松田さと子さんの香りの変遷
~キャリアアップや海外生活。移り変わる人生をサポート~
10代の後半は、サンダルウッドやフランキンセンスにすっかりはまりました。ちょうど大学で心理学の勉強を始めたころで、内面に意識が向き、常に内省を試み、インドなどに旅行に行っていたころです。
そして学生時代に終わりを告げ、メンタルクリニックで働き始めたころには、ネロリやジャスミンが好きになりました。私はここで芳香心理療法(*)を始めたのですが、非常に理解のあるクリニックで、セラピーのメニューづくりからカウンセリング、取材も一手に引き受けていて、責任のある仕事を任され、背伸びをしていた頃です。当時は、20代前半でしたが、年上のクライアントが多かったので、少し大人に、30代に見えるように心がけました。香水も大人の女性に思われるような、華やかな香りを好んでつけていましたね。
その後、ニューヨークに移り住むのですが、そのころはシダーウッドや屋久島の杉などの樹木系の香りに心惹かれるようになりました。ユズやクロモジなど、日本の香りに注目した時期でもあります。おそらく、日本が懐かしかったのだと思います。クロモジは、枝を折ったときの、ふわっと香る芳香が心地よく、ポプリにしてよく楽しみました。
ローズにはまった時期もあります。ローズも、産地や抽出法によって、まったく香りが違います。例えば、トルコのローズはさわやかで、ブルガリアは少し強い芳香です。そんな違いを知るのが楽しくて、産地をあちこち旅して巡りました。私はトルコのローズが好きです。
そして現在は、フランキンセンスやローズが好きですね。
こうして振り返ってみると、そのとき直面している状況と心理状態が、香りの好みの影響を与えていることが、とても分かります。
(松田さと子)
*松田さんが開発したメンタルアロマセラピーのメソッド。
SATOKO’S AROMA
-
内省のサンダルウッド、フランキンセンス
-
大人になろうと背伸びしたときのジャスミン、ローズ
-
海外の暮らしで日本を感じる屋久杉やクロモジ、ユズ
-
ローズの蒸留所めぐりで、再び、ローズと親しむ
-
内省のフランキンセンスへ
藤原綾子さんの香りの変遷
~完璧主義を手放し、自分の道を行く。心身の成熟をサポート~
私が最初に好きだった香りはベルガモットでした。アロマセラピーを勉強しようと思ったキッカケになったものです。実はベルガモットって柑橘系で、ちょっと子どもっぽい香りです。でもその反面、「完璧主義」というメッセージがあります。その頃、私はOLをしていて、まさに業務を完璧にしたくて、仕事に没頭していました。そして身体を壊してしまったのです。そのころ、ベルガモットに惹かれたことにはやはり意味があったのですね……。
そして次に注目したのがラヴィンツァラです。これは1.8シネオールが強く、香りが強くてそんなに良いにおいではないのですが、まさに免疫力を上げる精油です。そのころは、元気になる、健康を取り戻す……ということに身体や心が欲していたのでしょう。
そして今はローズとパチュリですね。今思うと、アロマを始めた当時…ベルガモットが好きだった頃は、パチュリの香りが大嫌いでした。でも、今は大好きで、ちょっとしたパチュラーですよ(笑)。
パチュリの意味は、「肉体と精神の統一」。やりたいことと、現実が合致してきている証拠かなと。今は自分の使命が分かり、その道を歩んでいる実感があります。
またローズは「愛」ですが、実は3~4年前に離婚をして、まさに人生の大きな転換期になったのですが、その頃からとても好きになった精油です。そのままですね(笑)。
好きな香りが、自分がそのときやっていたこと、感じていたことと合っていることを実感しています。
(藤原綾子)
AYAKO’S AROMA
-
完璧主義を手放すためのベルガモット
-
心と身体を健やかにするラヴィンツァラ
(イラストはイメージです) -
自分の愛を知り、人生の転換期となったローズ
-
自分の使命を歩んでいることを示すパチュリ
いかがでしたか? あなたも昔を振り返ったとき、どんな香りに支えられていたか思い出してみてください。
松田さと子(まつださとこ)さん(右)
臨床心理士・BPS認定Chartered Psychologist・健康心理士・IFPA、IFA、NAHA、AEAJ認定アロマセラピスト・IFPA Principal Tutor。現在は英国ロンドンでカウンセリングやイメージコンサルティング、独自メソッド「芳香心理療法」を行うほか、アロマの商品開発のアドバイスも行う。
藤原綾子(ふじわらあやこ)さん(左)
株式会社ソルシェール代表取締役。アロマセラピーサロンVert Merオーナー。魔女のアロマセラピー研究所所長。精油を用いて深層心理、潜在意識を導き出す独自メソッド「アロマアナリーゼ」は延べ2,000名以上が受講。精油の化学が得意分野だが、精油の特性や効能、歴史などから得られるメッセージを伝える「精油の翻訳家」。