「頭」が疲れている人が増えています。目の使い過ぎ、頭の使い過ぎで、頭皮がガチガチ。ヘッドマッサージをセラピーの一部に取り入れているセラピストも多いことでしょう。2018年2月号の「手技のコツ、施術のツボ。」特集のウェブ連動記事では、エステティックからリメディアルまで、多種多様な技を持つエステティシャンの甲原稚菜さんが、サロンで使えるヘッドマッサージのコツを解説。「髪がジャマしてうまくできない!」というセラピストに向けて、効果的なテクニックを紹介します。
取材・文◎山村浩子
【解説】頭が凝るのは、頭部の筋肉が”ひとつながり”になっているから!
ヘッドマッサージをする前に、まず頭が凝る仕組みについて学んでいきましょう。
頭部にはさまざまな筋肉がありますが、主には、①「前頭筋」、②「側頭筋」、③「後頭筋」の3つの筋肉があり、頭骸骨を包む「帽状腱膜(ぼうじょうけんまく)」によってつながっています。
まばたきや目を見開くときは、おでこから頭頂部にかけて伸びる「前頭筋」を使います。何かに集中したり、精神的ストレスをがまんしたり、スポーツなどで奥歯をくいしばるときには、頭の側面にある「側頭筋」が働きます。そして「後頭筋」には頭を支える役割があります。20kgもある頭を前に傾けるときに、「後頭筋」が頭を支えるのです。これらの筋肉の緊張が続くと、連動する「帽状腱膜」は、ガチガチに固くなってしまいます。つまり、前かがみの姿勢で集中して、長時間に渡るパソコンやスマホの操作をしたり、精神的なストレスを受け続ける人の頭は、とても疲れを溜めています。まさに現代人の生活は、頭部が疲労困憊していると言っても過言ではありません。
ヘッドマッサージを丁寧に行い、頭部をゆるめることで、深くリラックスでき、血行が良くなり、疲れも取り除かれます。眼の疲れや肩凝り、頭痛、不眠がやわらぎ、肌や髪が美しくなる効果も期待できるでしょう。
※禁忌
高血圧などの循環器系疾患、ムチウチやしびれなどの神経系疾患などを持つ方、熱がある方、ほか重度な疾患を持つ方、手術後の方に対しては、ヘッドマッサージは避けましょう。施術前のカウンセリングで、必ず確認してください。
【実践】側頭筋をゆるめる
側頭筋の働き
側頭筋は、前述したように、頭の側面、耳を取り囲むようにある筋肉です。ものを噛むときに使う咀嚼筋の1 つで、
下顎を持ち上げたり、下顎を後方に引く動きに関わっています。よって、食事をするときや、何かに集中しているとき、精神的ストレスを受けてこらえているとき、スポーツなどで奥歯をギュッと食いしばっているときに、緊張します。
ふだん自覚症状がなくても、思いのほか、疲れが溜まっているところです。
側頭筋へのアプローチ
クライアントの頭を右横に倒し、左手の五指で側頭筋をとらえ、圧をかけながら頭皮と筋肉を動かしていきます。
ポイントは、” 熊手” のように指を立てて、耳の上のくぼみに” ひっかける” こと。
アプローチする場所を頭頂部に向けて少しずつ移動して、側頭筋全体を施術します。右サイドは右手で、同様に行ってください。実際は頭にタオルを巻いて行います。
BADな施術例
施術につい夢中になると、脇を締めて行いがちです。しかしこれでは、力を上手にかけられないばかりか、施術者自身が肩凝りや腱鞘炎になる原因にもなります。
GOODな施術例
施術者は、自分の肩や腕の力を抜いて、脇の間をたまご1個分、軽く開けます。手首の伸展(反らせる動き)は約70度、屈曲(倒す動き)は約90度が限界です。手首のケガを防ぐため、曲げ過ぎないようにして行いましょう。
後頭筋〜頸部をゆるめる
後頭筋の働きと頸部の筋肉のつながり
後頭筋群は後頭部の深層にある、小さな4つの筋肉(小後頭直筋、大後頭直筋、上頭斜筋、下頭斜筋)から成り立っています。その起始は、後頭骨上項線、停止は帽状腱膜。頚部の筋肉と連携して、頭部の微妙な動きを支える働きをしています。
今回は、後頭筋にそのものにアプローチするのではなく、「頸部の筋肉(頭状板筋など)〜後頭骨上項線」に触れていきます。なぜなら、後頭骨上項線には、頭状板筋や、僧帽筋、胸鎖乳突筋など、さまざまな筋肉が付着しているから。後頭骨上項線にしっかり触れることで、頸部の緊張がゆるみやすくなります。
頸部へのアプローチ
プロフィール
甲原稚菜(かんばらわかな)さん
エステティックサロン「Loretta」オーナーセラピスト。大手外資系サロン勤務時に西日本拠点で指名顧客数No.1、新規顧客獲得率95%以上を得た実力派。トレーニングマネージャーやマニュアル制作など、要職歴任を経て、独立。
セラピスト向けの技術指導やコンサルティングも行う。http://lorettaloretta.com/